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藤井聡太に挑戦「豊島九段」が人との練習やめた訳 "孤高の努力家"が「棋聖」獲得までに行ったこと

東洋経済オンライン / 2024年5月8日 12時40分

「未だにそれに賭けきれない棋士が、多いのではないか」

豊島九段の変化

豊島は語る。

「高校時代は、学校が終わるとずっと棋士室にいました。クラスの友だちと遊ぶことは、ほとんどなかったですね。

独りで将棋の研究をしていても、寂しさは感じません。コンピュータも手を示したら返してくれるので(笑)。電王戦の後しばらくは、ソフトは友だちみたいな感覚だったかもしれません。いまは先生みたいな感じですけど。

ソフトも使っていくうちに、どういう思考をしているのかわかってきます。昔はよく間違えることもあったので『さすがにそれは、ないんじゃないの』とか。思考といっても計算しているだけなんですけどね。

コンピュータは局面の検討に使っています。評価値で示してくれるのが刺激的というか。でも人間と指すほうが、圧倒的に楽しいです。

いまは自分の棋力が伸びていると思って、将棋を指しています。でもそれが下り坂になったら。35歳、40歳になって、だんだん勝てなくなったときに、それでも頑張るということがどういうことなのか。続けていけるのかと、よく考えます。師匠(桐山清澄九段)の将棋を見ていたら、やっぱりすごいなと思います」

豊島にとって5度目のタイトル挑戦が2018年夏に巡ってきた。第89期ヒューリック杯棋聖戦は、羽生善治がタイトル通算獲得100期をかけた防衛戦でもあった。

前夜祭の話題は羽生が中心だったが、豊島にはそれはむしろありがたかった。「これまでは自分が初タイトルを獲るかと注目されてきました。(違う雰囲気の中で)流れが変わるかもしれないと思いました」。豊島が先行した五番勝負は、第4局で羽生が勝ち、最終局へともつれ込んだ。

初めてタイトル戦に出てから7年半がたっていた。その間に、関西若手から糸谷哲郎が竜王、菅井竜也が王位を獲得した。斎藤慎太郎も前年の棋聖戦で羽生に挑んだ。斎藤は豊島が20歳で王将に挑戦したとき、まだ三段リーグで、第4局では記録係を務めていた。

20代前半は、負けてもまた挑戦できると思っていた。だが棋士のピークは25歳くらいに訪れるとも言われる。早く結果を出さなければという気持ちが強くなった。チャンスは何度もあった。24歳で王座、25歳で棋聖、27歳で王将に挑戦。しかし、いずれも敗れた。

「自分はこのままタイトルを獲れないんじゃないか」

そんな不安が心をよぎった。

棋聖戦の2カ月前、王座戦二次予選で都成竜馬五段(当時)との対戦があった。その様子を棋士室のモニターで観ていた畠山は「今日の豊島さんは落ち着いていて、よい姿勢ですね」と言った。張り詰めた空気がない。なにかフワッとした丸いものに包まれた感じがした。この対局に豊島は敗れたが、感想戦で互いの読み筋を交わし合う姿は楽しそうだった。

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