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社会保障は金持ちから貧困層への再分配にあらず 主目的は「消費の平準化」と「保険的再分配」

東洋経済オンライン / 2024年5月10日 8時0分

子ども・子育て支援金をめぐる混乱した議論も、有識者やメディアなどが社会保障の主目的を知らないことが大きな要因だ(写真:ナオ/PIXTA)

なかなかよい所得の再分配制度――市場が家計に分配した所得の一部を政府がいったん預かり、家計に所得を再び分配する制度――が生まれそうである。4月19日に衆議院本会議で採決され、可決されたうえで参議院に送られた子ども・子育て支援法の中にある支援金の話である。

国会での議論の過程で、次の資料が公開されていた。

再分配の意味を的確に描いたこの図について説明しておこう。

今、所得がみんなに平等に分配されている社会があるとする。新たな支援金の対象となる大人たちみんなが同額の毎月450円を支援金に拠出するとしよう。みんなの拠出金は「こども金庫」というところに集められ、そこから、0〜18歳の子どもたちに再び分配される。

負担と給付の両面をみるとどうなるか?

こうした制度が準備された社会で今、ある家庭で子どもが誕生したとしよう。こども家庭庁の試算によると、その子が18歳になるまで、新しく創設される再分配制度による拡充分として合計146万円が給付されることになるらしい。この時、こどもの親は、支援金として1人当たり月に450円を19年間拠出した総額は約10万円になる。2人では20万円だ。この家庭は、差し引きして126万円の所得の受け取り超過となる。

こうした制度の創設が、まもなく参議院で議論され始めることになる。

この新しい所得の再分配制度を、今の若い人たちが反対するのだろうか? 巷間言われているように若い人たちも負担するからと、少子化が加速するのだろうか?

ここでは今、所得がみんなに平等に分配されている社会を想定しており、そうした平等社会では、高所得者から中・低所得者への垂直的な再分配はない。あるのは所得が同じ人たちの間での水平的な移転のみである。しかしそうした水平的な所得移転のみからなる新しい再分配制度であっても、子ども・子育ての当事者にとっては望ましい制度に思えるのではないだろうか。

野党や一部の有識者たちは猛反発している。中には、今回の支援金を医療保険料の流用と呼ぶ者もおり、その自説を拡張して、これからもそうした流用が際限なくなされるようになるという者もいたりする。

後述するが、支援金の財源調達方法は、賃金のサブシステムを構築する以外に使うことができるわけがない。そうしたこともわからない日本の民主主義、いわゆる有識者からなる言論界というのは、その程度のものと諦めて眺めておくしかないのだろう。

今はとにかく、「今回の支援金騒動の主役である政党、そして彼らを代弁するさまざまな応援団が、かつての年金騒動時とほぼ同じ懐かしい顔ぶれである様子を眺めると、歴史が繰り返されているように見えるものである。議論の経緯をみんなで眺め、誰が何を言っているのかをしっかりと記憶しておくことは、日本の民主主義を進化させるためにも、意味のあることのようにも思える」(「子育て支援めぐり「連合と野党だけ」猛反発のなぜーー 騒動の主役は『年金破綻論全盛時と同じ顔ぶれ』」 より)。

キーワードは消費の平準化

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