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NHKが手掛けている「国際共同制作」の最新事情 知られていない日本固有の物語を世界に届ける

東洋経済オンライン / 2024年5月11日 19時0分

一例をあげると、東京五輪に向けて2019年に「フロム・ザ・スカイ 空から見た日本」という空撮ドキュメンタリーシリーズを、フランスの制作会社と制作したのですが、フランスは東京五輪への関心を集めるために5分のミニ番組を作りたいとか、カンヌのMIPDOCでプレミア上映会をしたいとか、さらには放送後にイマーシブ展示の二次展開をしたいとか、さまざまなアイデアを共有してくれました。

「フロム・ザ・スカイ」では、日本の自然や風土を違った目で見てみたいとも思いました。そこでフランス人の撮影監督に入ってもらい、NHKのディレクターやカメラマンとの合同チームを結成して、空撮も含めた絵作りを担当してもらいました。それは私たちが普段作るものとはひと味違う仕上がりで、日本人がつい見逃してしまうような路地裏や田んぼのあぜ道も、彼らの目にはすごく新鮮に映るので、国際共同制作ならではの日本の風景を映像に残せたと思います。同じ空撮でもシネマチックな手触りの映像になりました。今回はフランス人の撮影監督でしたが、企画によっては作曲家とか編集者とか、各国の才能を持ち寄って制作できるところに国際共同制作の面白みがあると思います。

国際共同制作によってもたらされる「気づき」の大切さ

一方で、難しさもあります。言葉や文化の違いは当然ありますし、特に映像文化の違いは大きいと感じます。突きつめていくと、何をリアルと感じるかということに違いがある気がします。三脚を立て、撮影者の気配を消したスタティックな映像にして、視聴者を没入させる手法がリアルだという人もいれば、むしろ担ぎ(のカメラ)で撮って、さも自分がその場の取材に同行しているかのように感じさせるほうがリアルだという人もいます。NHKには長年培ってきた撮影の手法やノウハウがありますが、海外の制作者との感覚や感性の違いを理解しあい、擦り合わせていくところが難しいところでもあり、またそれがうまくいったときには、お互いにとって素晴らしいものができたという満足感にも繋がるんです。制作者にとっては、新しい表現手法を手に入れたような喜びが双方に生まれるんですね。

違いをもう一つ挙げるなら、編集です。構成の仕方という点では、日本流の起承転結なのか、欧米の三部構成なのかという違いがあります。ナレーションがある場合、日本語は主語から始まって(文章の結論にあたる)述語が最後にくるので、カット尻の余韻を意識した編集のテンポが生まれます。英語のナレーションであれば、文章の主旨に該当する動詞が早めにくるので、おのずと編集の切れ味みたいなものが違ってくるんですね。実際に共同制作をやっていると、「そういうロジックで編集しているんだ」という気づきにも繋がり、制作者にとっては国際共同制作のメリットだとも思いますね。

これからの国際共同制作の潮流

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