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国内敵なし、日立「鉄道売上高」今期1兆円超えへ ドーマー副社長インタビューで判明した全軌跡

東洋経済オンライン / 2024年5月13日 6時30分

「ペーパートレイン」の批判はねのける

入社してまず感じたのは、日立が行った過去2回の入札案件の内容は「非常に優れていた」ということ。にもかかわらず、なぜ受注できなかったのか。理由は簡単。「日立は英国の鉄道運行の仕組みが日本とまったく違うことを理解していなかった」。英国の鉄道は運行とインフラを分離した上下分離方式で運営されており、さらに運行事業者は自ら車両を保有することはせず、リースで調達する。

もう1つ付け加えると、日立のスタッフたちの英語力が必ずしも高くなく、PRも下手。技術の仕組みを説明するばかりで、その技術が運行事業者にどのようなメリットをもたらすのかを説明できない。

ドーマー氏の入社時、日立は英仏海峡トンネルの英国側出口とロンドンを結ぶ高速鉄道路線を走る鉄道車両「クラス395」174両の受注に狙いを定めていた。英語下手の日本人社員に代わり、「顧客と日立をつなぐ橋渡し役として、顧客と話をすることに多くの時間を費やした」。

ペーパートレインという批判に対しては、本物の車両を日本から持ち込む代わりに英国の中古車両に日立の機器を搭載、実際に線路の上を走らせ、その性能を納得させた。さらに車両工場のある笠戸や鉄道システムの開発・設計などを行う水戸といった日立の国内事業所にも案内し、現場を見せることを徹底した。2005年、クラス395の入札に成功。納期を守ったことが高く評価されるというおまけまで付いた。「納期を必ず守ることも戦略に加えていた」と明かす。かつての勤務先で納期を守れないことに忸怩たる思いを抱いていただけに、納期順守はドーマー氏のこだわりでもあった。

日立がクラス395の開発・製造に取り組んでいた2007年、総事業費1兆円という巨大案件が英国に登場した。「都市間高速鉄道車両置き換え計画(IEP)」と呼ばれる866両の製造案件。27年間にわたる車両の保守もセットだ。規模の大きさだけではない。日本では車両の保守はJRなどの鉄道事業者が行うため、日立は未経験。

当時、日立本社の会長を務めていた庄山悦彦氏は「リスクが大きすぎる」と難色を示したが、ドーマー氏ら現地スタッフの熱意にほだされ入札参加へのゴーサインを出した。英国国内に車両工場や保守基地を建設し雇用が生まれるというPR戦略も奏功し2012年、受注にこぎつけた。案件の規模からいってシーメンスなどの大手が受注するとみられていただけに、「誰もが驚きましたね」。

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