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国内敵なし、日立「鉄道売上高」今期1兆円超えへ ドーマー副社長インタビューで判明した全軌跡

東洋経済オンライン / 2024年5月13日 6時30分

その一方で平然と受け止めた人もいた。当時の社長だった中西宏明氏。受注の成功を報告したところ、「すごいね。それで、次は?」とせかされたという。鉄道事業には大きな成長余地があると見抜いていたのだ。

IEP向けの車両「クラス800」は高い評価を受け、英国国内の他路線も次々と採用。この成功によってドーマー氏は鉄道現地法人のトップに就いた。

イタリア企業買収で欧州大陸進出

次の照準は欧州大陸に定めた。2010年代に入りイタリアのハイテク関連企業フィンメカニカ(現レオナルド)が傘下の大手鉄道システムメーカー・アンサルドSTSと鉄道車両メーカーのアンサルドブレダをセットで売却する方針を固め、日立に買収を打診。日立が欲しいのはSTSが持つ技術力と世界的に広がる販売網。一方、ブレダはトラブル続きで業績が悪化していた。

ドーマー氏は2012年にイタリアにあるブレダの車両工場を視察した際、買収には値しないと判断した。「工場が十分に活用されていないので固定比率が高い。品質も十分ではない」。

その後、新たに就任したフィンメカニカのCEOはドーマー氏の助言を受けブレダの業績改善に力を注いだ。ドーマー氏が2014年に再訪すると、「品質を高めようという意欲が感じられた」。日立は方針を改めてSTSとブレダの両方を買収することに決め、2015年に実現した。その年、ドーマー氏は執行役常務として日立本体の経営陣に名を連ね、2019年には副社長に昇格した。

英国では2021年、ロンドンとバーミンガムを結ぶ高速鉄道路線向け車両の製造や保守をアルストムと共同で受注した。アメリカではSTSの技術を活用してハワイ州ホノルルで高架鉄道「スカイライン」が2023年に開業したほか、ワシントンDCでも3000億円規模の地下鉄車両製造を受注した。

日本流の生産手法を取り入れ生まれ変わったブレダの車両工場も欧州の鉄道製造に不可欠の存在で、イタリアなど欧州大陸向けは元より、英国向けの車両も製造している。「日本で開発し、イタリアで製造し、英国に送り込むという国際分業体制が整った」。

大型M&Aは今後も続く?

ブレダは日本流の生産スタイルを持ち込んで復活したが、逆に日本がブレダから学んだこともあった。ドーマー氏が例として挙げたのは電気や通信システムなどの配線を車両に取り付ける作業だ。ケーブルが多数あるため、ミスなく効率的につなぐのが難しいことが多いだけに日本では熟練工の技に頼る。だが、ブレダでは事前に配線をモジュール化して、それを車両に取り付けていた。「非常に賢いやり方」とドーマー氏は賞賛する。

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