日本企業の株価が海外より上がらない「根本理由」 アクティビスト丸木氏、経営陣に苦言を呈する
東洋経済オンライン / 2024年5月14日 19時0分
労働の対価として給料を支払ったり、財やサービスの授受を通じて代金のやりとりをしたりしているわけです。仮に経営が赤字になっても、ただちに支払いが止まることはないでしょう。
一方、株主と企業の間にこうした契約関係はありません。
株を買っても、会社が利益を出して株価が上がらなければ報われません。利益がなければ配当も期待できません。逆に株価が下がって損が出ても、当然ながら自己責任です。そういうリスクを背負うからこそ、会社法では株主総会での議決権のみならず、株主にある程度の特別な権利を認めているのだと思います。
そもそも株式会社は、こういうリスクマネーを集めて資本とすることで初めて成り立ちます。上場企業であれば、なおさら不特定多数から株主を募ることになります。
以前、よく「会社は誰のものか」という議論がありましたが、お金の出どころ、オーナーという意味では明らかに「株主のもの」で議論の余地はありません。そして経営者は、主権者でもあるその株主によって選ばれ、利益を上げるように働くことを期待されたエージェントなのです。
その意味では、経営者の仕事は我々のようなファンドマネージャーと同じともいえます。
ファンドは出資者である投資家のためにリターンを出すのが仕事。経営者も株主のためにリターンを出し続けることが最大の仕事です。いかに効率良く、より大きなリターンを株主にもたらすかが目的であり、その手段としてステークホルダーを上手に使いこなすことが求められるのです。
そして、ファンドマネージャーが出資者に運用状況を説明することと同様、株主への説明は経営者の仕事の一部でもあるのです。
それが嫌なら、非上場企業になればいい。実際、昨今はシダックス、ベネッセホールディングスや大正製薬をはじめ、さまざまな理由でMBO(マネジメント・バイアウト:経営陣による自社買収)を行う企業が少なくありません。
なお、東芝の非公開化はMBOではありませんでしたが、不特定多数の株主やうるさいアクティビストに経営を左右されないためには、これも選択肢の1つでしょう。
繰り返しますが、これは株式会社の構造の基本です。ところが日本では、この基本があまり認識されていない気がします。経営者でさえよく知らないか、もしくは意図的に曲解していることが多いのではないでしょうか。
「黒字経営だからいい会社」は違う
私がこういう言い方をすると、しばしば経営者の方から反論されます。
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