地味な路線だった「JR奈良線」、利用者の急増なぜ 沿線自治体も費用負担して複線化など輸送改善
東洋経済オンライン / 2024年5月14日 6時30分
ただ、2001年の部分複線化後も、JR藤森―宇治間など線内の8割近くが単線で残った。朝ラッシュ時は1時間あたり片道8本運行されているため、列車行き違いのため停車時間が長くなった。
そこで府はJR西日本に複線化第2期工事の実施を要請し、2013年度に協定締結へこぎつけた。JR藤森―宇治間9.9km、新田―城陽間2.1km、山城多賀―玉水間2.0kmの計14kmで、2016年に着工する。あわせて京都駅と六地蔵駅のホーム拡幅などの改良工事も実施された。
そして2023年3月、第2期事業が完成する。増発は朝の京都―宇治間1往復にとどまった。
一方、「単線区間での交換待ち停車がなくなり、朝の普通列車が早くなったのが助かります」と語るのは、JR奈良線に関する著作がある高田圭氏だ。普通城陽―京都間の所要時間は平均6分縮まり、バラバラだった運転間隔が均等化された。通勤利用していると複線化の効果を実感しているという。
高田氏は「ダイヤの安定化という意味で、絶大な威力を発揮している」とも指摘する。以前は数分レベルの遅れは日常で、輸送障害が起きたら3~5時間は収束しなかった。それが複線化でほぼ皆無となった。
JR奈良線の複線化事業で注目したいのは、沿線自治体が工事費をJR西日本と折半したことである。2001年完成の第1期工事では、事業費152億円のうちJR西日本が76億円、残りを京都府38億円、京都市15億円、宇治市など他市町23億円と負担した。
官民ともにJR奈良線は輸送改善をすれば利用が伸びる余地はあると判断し、積極策を講じた。実際、運行本数は国鉄時代と比べて5倍近く、利用者は約3倍に増えた。
一方、今回の第2期工事の事業費397.1億円のうち、JR西日本は約25.2%の100億円を負担するにとどまった。事業性、採算性を懸念したようだ。残り297.0億円について、府と沿線6市町がそれぞれ148.5億円ずつ負担した。
なぜ、地元はJR奈良線に期待するのか。京都府建設交通部交通政策課の笹井淳課長は「京都府にとって、奈良線の高速化・複線化は長年の課題でした」と語る。
府は総合計画で「府域の均衡ある発展」を掲げ、府内のJR線の改良工事へ積極的に税金を投じてきた。1999年に山陰本線・舞鶴線の電化を完成させ、次にJR奈良線複線化第1期工事、2010年に山陰本線園部までの複線化も実現させた。次はJR奈良線の複線区間を延長して……と府民の期待が高まっていた。
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