なぜ若者は怒られると過剰に反応してしまうのか 上司にとって「怒らない=最適解」になる病理
東洋経済オンライン / 2024年5月15日 6時50分
結果として、驚きあきれるようなことが、教育現場では起きがちだ。ちょっと怒るとこの世の終わりみたいな顔をする学生は、けっこういる。めちゃくちゃ楽しそうに笑顔でおしゃべりしていて、うるさいよ静かにして、と言うと一瞬でこの世の終わりのようなツラに変わる。
この人ら、私語をしたら怒られるって知らないのか? って思ったりする。たぶん知らないのだ、怒られてこなかったから。怒ることを、オトナが放棄してきたから。私語をする若者に怒ると、逆にオトナが怒られる。若者が萎縮してしまったらどうする。トラウマになったらどうする。前向きにしゃべっているだけだ。自分で考えて更生する機会を奪うのか。お前が不機嫌なだけではないのか……。
何の中身もない言葉で怒りを排除してきたのは若者ではなく、オトナである。
このような背景を経て、怒られたときの若者のリアクションは2パターンある。まずはこの世の終わりのような顔をする。次に、徹底して「自分が悪くて怒られたわけではない」と抗弁するパターンである。言葉は悪いが、怒った学生から粘着質に絡まれることは、教育現場では珍しくない。
たとえば、授業アンケートで私語への苦情があったので、私語は止めてねって怒ると、怒られた学生からこういう反応が来る。
「授業アンケートへの返答は時間がもったいないので止めてほしい」
「私たちは授業を受けに来ているので、苦情対応のために来ているのではない」
自分たちが怒られたという事実からは論点をそらしつつ、怒られる背景となった要因(たとえばアンケートへの返答)について苦情を述べる。「私たち怒られましたけど、あれ、私たちは悪くないんですよ。あなたの授業の構造の問題なんです」と言いたいかのようだ。
なんでここまでしつこく絡むのだろう。なんでそんなに怒られたくないのだろう。よほど自意識が強いのだろうか。たぶん違う。怒るというのはありえないことで、だから怒られるのはよほど恥ずかしいことをした証明だ、と教わってきたからだ。
怒ることを世の中から排除した結果、よっぽどのことをしないと怒られないので、怒られるヤツというのは相当恥ずかしい、ヤバいヤツだということになる。こう認識した結果、怒られるお前は最低だ、社会の底辺だ、みたいに感じてしまうのだろう。とんでもない勘違いである。私語に怒っている先生は別に個人の人格を攻撃しているわけでもないし、それは取り返しのつかない失敗でもなんでもない。
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