ファンド語る「ブラザー工業とのTOB競争」の意義 ローランドDGのMBO、主役の一人がタイヨウCEO
東洋経済オンライン / 2024年5月15日 7時50分
――MBOの狙いは短期間に集中して成長投資を行うためと、ローランドDGは説明しています。
深い変化を遂げるには、上場したままだと難しい。四半期ごとにいい数字を出さなければ、株価を下げるという形で市場から「バツ」がつけられるからだ。構造改革やリストラ、海外企業の買収などを行うと利益創出までに時間がかかる。非上場にすれば、そのような改革を強く推進できる。
資本主義を応援しているアメリカ人がこんなことをいうのはおかしいと思われるかもしれない。だが市場にはいい面もある一方で、短期的にしかものをみないという危険性がある。
ローランドDGに「待つ」選択肢はなかった
――上場企業の多くは、たとえ株価が下がっても上場したまま成長投資や費用のかかる改革を行っていませんか。
株主がみな長期視点の投資家なのであればそれでもいい。しかし、経産省の指針にもあるとおり、敵対的でも積極的に企業買収ができる環境になっている。
経営者と会社にとって(株価を顧みないことの)リスクが上がっているのではないか。もちろんそのリスクがあるからこそ、日本の企業がより強くなる可能性が高まっていると思う。
ただローランドDGとしては、同意なき買収の提案をブラザーから受けている以上、そのまま待つという選択肢はなかった。
――ブラザーからの買収提案を受けてローランドDGはMBOに踏み切ったということでしょうか。防衛のようなMBOに問題はないのでしょうか。
2023年9月にローランドDGの取締役会がブラザーからの買収提案を受け取った際、私はこれを真剣に検討するべきだと助言した。確かにそれまでのブラザーとの協業は失敗だったが、ブラザーの提案が真摯な提案である以上、絶対に棚ざらしにしてはいけない。
また、取締役会は真摯に株主利益を追求するために、ブラザーからの買収提案だけではなく、ほかの提案も比較検討すべきだと思った。
私は早い段階で検討メンバーから外れたが、取締役会はすぐに真摯な検討を始め、ローランドDGとその株主にとって何がベストかを複数の選択肢から議論したと理解している。その結果、われわれのMBO提案が企業価値と株主共同の利益の両方に優れていると取締役会は判断したのだと、考えている。
ディスシナジーの詳細などかなりの開示が今回なされたことは、日本の資本市場にとってプラスであり、経産省指針の成果だと思う。
――経産省の指針は日本企業にさらなる影響を与えると思いますか。
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