「ソニー・ホンダ」異なる文化から生まれたもの デザインの視点から見る異色コラボの結節点
東洋経済オンライン / 2024年5月16日 11時0分
企業を取り巻く環境が激変する中、経営の大きなよりどころとなるのが、その企業の個性や独自性といった、いわゆる「らしさ」です。ただ、その企業の「らしさ」は感覚的に養われていることが多く、実は社員でも言葉にして説明するのが難しいケースがあります。
いったい「らしさ」とは何なのか、それをどうやって担保しているのか。ブランドビジネスに精通するジャーナリストの川島蓉子さんが迫る連載の第18回は、ソニー・ホンダモビリティを取り上げます。
設立3カ月で試作車を発表
昨年1月にアメリカ・ラスベガスで開催されたIT見本市「CES」で試作車として発表された電気自動車(EV)「AFEELA(アフィーラ)」。その後、「JAPAN MOBILITY SHOW」や今年のCESでも披露され、話題となっている。
【写真】2024年1月のCESでお披露目された”2代目”アフィーラ
2022年10月、ソニーグループと本田技研工業が設立した合弁「ソニー・ホンダモビリティ」は設立当初から両社の共創によって何が生まれてくるかについて業界内外から注目を集めていたが、事業内容が異なる企業の協業は容易ではない。しかも、合弁設立からわずか3カ月でゼロから試作車を作り上げて公に発表するというスピード感は尋常ではない。
どのようなプロセスを経て創り上げたのか、両社が組むことでどのような効果があったのか、そして新たに設立されたソニー・ホンダらしさとは――デザイン面から探るべく、同社の中枢部門の1つである「デザイン&ブランド戦略部」を取材した。
デザイン&ブランド戦略部は、モビリティそのもののデザインだけでなく、ソニー・ホンダモビリティという企業のブランディングをはじめ、空間、プロダクト、UI/UXなども含めたデザインを包括的に手がけている。
今回話を聞いたのは、戦略部のヘッドを務める石井大輔さんと、石井さんのサポート役を担うゼネラルマネジャーの河野拓さん。石井さんは2021年からソニーグループのデザイン部門を担うクリエイティブセンターのセンター長も務めている一方、河野さんは2017年からホンダでデザイン開発室室長を任されてきた。
当初は一緒にやる難しさもあった
現在、デザイン&ブランド戦略部における、ソニーとホンダの社員の比率はほぼ半々だという。これまで約1年半共に仕事をして、互いにどんな印象を持っているのか聞いてみた。
「デザイナーが圧倒的な知見を持っていて、何事においてもスピード感があると感じました」(石井さん)。「あらゆるものに対して美意識が高いことに驚かされました」(河野さん)。
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