「ソニー・ホンダ」異なる文化から生まれたもの デザインの視点から見る異色コラボの結節点
東洋経済オンライン / 2024年5月16日 11時0分
同社を立ち上げるにあたって、策定した開発コンセプトは「NEWTRAL」。「NEUTRAL(中立)」と「NEW TRIAL(新たな試み)」を重ねた造語で、互いの組織文化が混ざり合い、化学反応を起こして新しい文化を創っていくという考えが込められている。
「異なる要素が一体となって中和されることで、ある意味澄み切った環境が生まれ、そこからさまざまな挑戦が生まれていくことを目指しました」(石井さん)
とはいえ、異なる会社が一緒になって、チームの一体感を醸成するのは、そう簡単なことではない。実際、使っている専門用語が異なるなど、当初は一緒にやる難しさもあったという。
しかし、自由闊達な精神を尊重し、他にない独自性を追求する姿勢には通底するものがあり、それがいい方向に働いた。たとえば車体のデザインをおこす時、ホンダのメンバーはスケッチやクレイで行うのに対し、ソニーは最初から3Dモデルなど進め方そのものが異なっていたが、双方で話し合って3Dモデルを使うことに。
従来のやり方と異なっても、よりよいものを作れるのであれば、積極的に取り入れる。メンバーがフレキシビリティを持って臨んだことが、チームの求心力につながっていった。「すべての情報をオープンにし、メンバーが自分の専門領域を超えてフィードバックし合うことで、相乗効果が生まれました」と2人は言う。
従来の車作りとは違う作り方に
それぞれのチームのやり方にこだわることなく、「よりよいものを」という全体最適を探りながら、もの作りの工程も怒濤のようなスピードで進められた。経営層に向けての提案を行い、そこに修正が入り、改良してまた提案する。「打率で言うと、0.5とか1割程度という厳しさでした(笑)」と河野さんは話す。
「クルマの開発とは、長い期間を要するものであり、どの段階でマネジメントの決裁を仰ぐかについてのスケジュールがあらかじめ決まっていて、ある程度固まった段階でマネジメントの判断を仰ぐのですが、今回は途中で細かく決裁が入っていくという、まったく違う進め方でした。それが逆に、いい方向に働いたと感じています」
「デザイナーは、物事を立体的にとらえる能力が高いのに対し、マネジメントは、物事をコンテクストやストーリーでとらえる能力に長けています。結果的に目指しているところは同じでも、アプローチの仕方が違う。そこをつなぎながら進めていく仕事でした」(石井さん)
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