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Z世代を不安にさせるビジネスがなぜ流行るのか 不安に動かされる「われわれ」の社会の病理

東洋経済オンライン / 2024年5月17日 10時40分

不安だから、不安のない世界であるテーマパークに通い、みんながやっていることをやろうとし、就活を早くから始め、成長を実感できるように転職しようとする。さらには、(自己を否定されるように思うために)叱られることを恐れ、「アンチ」に対して否定的な態度を取る。このように、不安に動かされるZ世代の若者たちの心理を舟津さんは対話をもとに描き出す。

金儲けがむき出しになった「不安ビジネス」

そして、経営学者としての舟津さんは、そのような不安をビジネスの種にするオトナたちをも描き出す。推し活をしていれば不安を感じない若者に向けて、「推し活」で幸福になれるとシンクタンクは言い、友達と違っていたら不安になる学生に1年生から就活を勧める。そして、自己の成長を求める若者たちにいささか怪しげなビジネスのインターンをさせる。舟津さんは「不安ビジネス」と表現しているが、要するに不安に動かされる若者たちを商売の種にしているわけである。

かつ、舟津さんがいみじくも指摘しているように、不安には根拠がない(なくてもよい)。Z世代の若者たちの不安には必ずしも根拠はない。友達がいなくたって、あるいは共感されなくなっても元気で生きていけるかもしれない(というか、おそらくそうだ)。しかし、不安に根拠はないから、若者たちは不安になり、それを商売の種にするオトナたちが出てくる。

ところで、上の不安ビジネスの説明を見たときに、どこかで見たような気がする、という気はしなかっただろうか? 「幸福になれる」「成長できる」「安心できる」……そう、怪しげな新興宗教あたりがお金儲けをするときに使うフレーズである。「先祖が泣いている」「霊がついている」「修行して新しいステージに登れる」などという言葉を使って不安を煽るのが宗教を騙るビジネスの特徴であるが、上のような不安ビジネスはその新しいバージョンと言えるかもしれない。

ただし、古きよき?宗教を騙るビジネスと現代の不安ビジネスには一つ大きな違いがある。かつての怪しげな新興宗教は、「魂の救済」のような形で、一応の正しさというか、ある種の倫理性を主張する。単なる嘘かもしれないが、一応お金を投じることが何らかの意味で善であると主張するわけである。しかし、現代の不安ビジネスはそのような正しさや倫理性を主張するでもなく、ただ根拠のない不安を煽る。言ってしまえば、金儲けがむき出しになったビジネスなのである。

経営者も労働者も不安を抱えている

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