LINEヤフーへの行政指導が悪手である3つの理由 再発防止に資本関係の見直しが必要なのか
東洋経済オンライン / 2024年5月17日 17時0分
本来なら業務の委託元であるLINEヤフーが委託先であるネイバー側に「対策をもっと強化するように」と指導できる立場である。
しかし、総務省からみると、「ネイバーは委託先だが大株主でもあるので、LINEヤフーはネイバーに強く出ることができない、あるいは忖度するかも。だから資本関係見直しが必要でしょう」というロジックだ。
委託元が委託先に忖度?
筋が通っているようにも思えるが、これは①ネイバーがセキュリティ対策強化に消極的で、②LINEヤフーからネイバーへの忖度が存在する、という2点が確認されて初めて成り立つ。総務省はこの2点に関してどこまで確信があるのであろうか。
また、ネイバーの「資本的な支配」が弱まることが、セキュリティ強化に直結するのであろうか。
韓国・大邱大学経済金融学部の金良姫(キム・ヤンヒ)教授は、韓国『ハンギョレ』紙とのインタビューで「LINEヤフーは技術やコンテンツの面でネイバーに依存せざるをえず、そもそもソフトバンクもそのためにネイバーと経営統合した。短期間で関係を断ち切れというのは無理がある」と述べ、資本関係の見直しはセキュリティ強化につながらないと見る。
韓国経済や通商問題に詳しい、亜細亜大学アジア研究所の奥田聡教授も、「短期間に2度も行政指導をしたこと自体、違和感を覚える」としたうえで、こう指摘する。
「指導は再発防止策に絞るべきで、資本構造にまで踏み込んだのは勇み足。総務省としてはLINEをNTTやドコモのような基幹インフラと同列にみなして外国資本の影響力を削ごうとしているのだろうが、LINEはSNSの一つに過ぎず、韓国企業が関与しているのは当初からわかっていた。そうした背景が嫌なら、中国のようにすべて自国でサービスを開発するしかない」
実は日本政府も歯切れが悪い。5月15日の官房長官会見で北海道新聞の記者がセキュリティ改善に資本関係見直しが必要な理由を質問した。林芳正官房長官は正面から回答せず、「セキュリティ・ガバナンスの見直しにはさまざまな方策があると理解しているが、いずれにしても委託先管理が適切に機能する形になることが重要であると認識している」と述べるにとどまった。
「まるで中国の所業」
韓国で反発が強まると、総務省は「行政指導の文書に、ネイバーに対してLINEヤフーの株式を売却しろとは書いていない」と説明するようになった。
だが、前述のように資本関係の見直しに触れているのは明白な事実であり、それを実施しようとすればネイバーが株式を売却するかソフトバンクが株式を買い増すしかない。
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