LINEヤフーへの行政指導が悪手である3つの理由 再発防止に資本関係の見直しが必要なのか
東洋経済オンライン / 2024年5月17日 17時0分
ゆえに、韓国の野党やメディアは「韓国企業が日本で投資をして育て上げたLINEを日本政府が奪おうとしている」と批判のトーンを強めているわけだ。
この点を、亜細亜大学の奥田教授は「外国企業の投資審査は、本来、その企業が新たに日本に進出を希望した際に行うべきもの。すでに投資をした外国企業に、あとから『株式を手放せ』『技術は残して日本から退場せよ』などと迫るのは中国がよくやるような話だ」。
韓国政府は「韓国企業に対する差別的な措置は認められない」という立場を示しており、また、今回の行政指導は日韓両国が2003年に発効させた「日韓投資協定」に抵触するのではないかという主張も韓国側から提起されている。
この協定は、日韓両政府とも、自国に投資をした相手国企業は自国企業と平等に扱うという「内国民待遇」を定めている。要するに差別はNGなのだ。
当然、総務省もこの協定は承知しているはずだ。しかし、奥田教授は今注目の「経済安全保障」という概念を持ち出せば突破できると計算したのではないかと分析する。
「安全保障を理由に投資に干渉することは先進諸国では珍しくなく、とくに通信業への規制は広く行われている。アメリカがTikTokからバイトダンスの排除を企図したのもその一例だ。それらが総務省の措置の前例になった可能性がある。ただ、日本の経済安保に関する動きは粗削りで『手柄主義』が目立つ」
経済安保前のめりの日本政府
「手柄主義」の例として奥田教授が挙げたのが大川原化工機をめぐる冤罪事件だ。「経済安保を掲げれば手柄が大きくなる」という功名心が官界でみられると懸念する。
中国の習近平政権は経済安保を掲げて外国の企業や駐在員に対する監視を強化し、身柄の拘束までしているが、それは外資の撤退を招いている。
林官房長官は、今回の問題に関して「韓国はじめ外国企業の投資を歓迎する立場に変わりはない」と述べているが、外国企業はそうは見なさないリスクを孕んでいる。
これが最も懸念されるところなのだが、今回の行政指導は日本との関係改善に尽力してきた尹錫悦(ユン・ソンニョル)政権の「梯子を外す」一手となった。
タイミングもまずかった。4月の総選挙で保守系与党が大敗を喫し、進歩系野党による政権批判の勢いが増していたところに、格好の攻撃材料を提供する形となったのだ。
松本剛明総務相が初代韓国統監・伊藤博文の子孫だということも、韓国のナショナリズムを刺激する。
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