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「何十年前?」職員室のDX化が進まない「なぜ」 生徒にとっても貴重な日々が奪われていないか

東洋経済オンライン / 2024年5月19日 16時0分

女性がさらに驚いたのは、ソフトの独特な使い方だ。パソコンで文書をつくるソフトは「一太郎」と決まっている。外部と共有する際はコンバーターをつかって「ワード」に変換して送っている。これも一手間だ。

ICT技術を避けるような雰囲気も?

女性は特に、若手教員への影響を心配する。

大学在学中はオンライン授業を受け、様々なデジタル技術を使ってきたはず。なのに、学校では職員会議の資料をプリントアウトしてホチキスどめする仕事を与えられる。

若手が、プリントアウトした紙資料をコピーするために印刷機の行列に並んでいるのを見た。ただでさえ、なり手が少ないのに、あまりの非効率に嫌気がさしてやめてしまうのではないか。

「先生には業務を効率化し、教材研究や授業準備にこそ時間を使ってほしいのに」

ベテラン教員を中心に、ICT技術を避けるような雰囲気があるとの指摘もある。

都内の公立中学校に勤める非常勤講師の50代女性は「学校にはITアレルギーがあるように感じる」と話す。授業をした公立2校で、デジタル機器が充実しても改革が進まない実態を目の当たりにした。

生徒1人に1台の情報端末が配られるのに合わせ、教員用にも複数台が配備された。ただ教員全員分はなく、職員室から持ち出せない。

2021年度、コロナの感染拡大で密を避けようと、職員会議をオンラインで開くことになった際も、参加者のほぼ全員が職員室にいたという。

女性はテストの採点などの仕事を持ち帰って、在宅での仕事の合間や移動中の電車などでこなしたい思いがある。持ち帰りもできないため、学校外からデータにアクセスできず、学校に遅くまで残ることになる。

さまざまな配慮で前へ進めない

保護者との連絡方法も気になる。

女性の勤務校では、放課後の職員室で、多くの教員が保護者に固定電話から連絡し、不登校の家庭に日々の様子を聞き取ったり、欠席だった子に必要なことを伝えたりする。保護者の仕事の都合で連絡がつくのが夜になってから、ということも少なくない。

相手の携帯電話にかけることで不在着信が残り、折り返し待ちのために遅くまで帰宅できない姿もよくみる。メールやLINEでのやりとりや、教員が自宅から携帯などで電話することは認められていないためだ。

女性は疑問に思い、理由を同僚に尋ねてみた。

メールなどではやりとりが記録され、教員の名前とともにネット上などでさらされる恐れがある。そんな説明を受けた。理屈はわかるが、長時間労働の温床になっていることを考えると、合理的とは思えない。

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