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「何十年前?」職員室のDX化が進まない「なぜ」 生徒にとっても貴重な日々が奪われていないか

東洋経済オンライン / 2024年5月19日 16時0分

こうした改革を担ったのは、一人の中堅教員で、20年度に教務主任になったのをきっかけに、徹底的な効率化を目指した。

小一時間かけてノートに手書きしていた翌週の授業計画を専用ソフトを使って5分ほどでできるようにしたり、通知表を日々少しずつつくりためるようにしたり。

教職員間の連絡はマイクロソフトの「チームズ」やLINEのオープンチャット機能を使って簡略化した。

その結果、6年担任の月の残業時間は、19年4〜6月の3カ月で合計300時間を超えていたのに対し、21年の同時期は計約170時間減らすことができた。

改革が進んだのは、教員の数が多くなく意思疎通が容易だったことや、改革に熱心なこの教員の努力を管理職が理解して後押ししたことなどが背景にある。

自治体もIT化に積極的で、工夫を阻むようなルールがなかったことも奏功した。

紙が中心だった保護者へのお便りを見直し、デジタル配信サービスも使い始めた。この教員は「管理職や教育委員会の指示を待つのではなく、現場がまずはやってみるボトムアップで取り組むことで大きく進んだ」と振り返る。

まずはやってみることから

ただ、こうした学校はまだ多くはない。むしろ、学校には過度の「紙文化」やデジタル活用を禁じるルールが残り、改革が進まない現実がある。

学校業務の情報化を推進する文科省の有識者会議の元委員で、教育研究家の妹尾昌俊さんは、学校によってデジタル化の進展に差が出ている現状について、「不祥事やネット上のトラブルなどを恐れて慎重になったり、デジタル環境がない家庭に配慮したりして進められない現状が一部の学校にはある」と指摘。

そのうえで、「リスクを完全になくし、形式的な平等を目指すよりも、まずはできる範囲でやってみて、起こった問題に個別に対処するという考え方が必要だ」と話す。

一部のデジタルに強い教員が自由に取り組むことで、「これは便利だ」と周りの人に自然に広がる。

管理職はリスクに配慮しつつ後押しする。教員が授業や生徒指導などの本業に専念するため、そんな好循環が理想という。

「そのためにも、自治体は個人情報の扱いなど、デジタル移行の壁になるようなルールをまずはできるだけ緩和し、効果や弊害の有無を検証するべきだ」

朝日新聞取材班

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