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ラーメン屋経営で地獄見たプロレスラーの気づき 川田利明が向き合う「お客様は神様です」の怖さ

東洋経済オンライン / 2024年5月19日 12時30分

俺が声高に繰り返しアピールしたいのは「お客さんは手間を買ってくれない」という点だ。

手間は目には見えない。

目に見えないものにお金は出せない。

じゃあ、いっそのこと、手間をかけるのをやめて、もっと楽なラーメン作りをすればいいじゃないか、と思われる方もいるかもしれない。

でもね、それだけは絶対にできない。

手間をかけていることは気づいてもらえないけれども、手を抜いてしまったら、即座にそれはバレるからだ。お金を払って食べにきているお客さんのシビアな洞察力を甘く見てはいけない。

手間を加えた味からは、もう引き返せない

俺の場合、ラーメンだけでなく、サイドメニューも自分で調理しているから、仕込みの段階での手間はさらに拡大している。

たとえば、ウチの看板メニューの唐揚げ。

揚げるだけで完成、という味も付いた肉を業者から購入することもできるけど、それをお客さんに出したら、すぐに「あれっ、味が変わった?」とバレるし、一度損なってしまった信用は簡単には取り戻せない。

だからこそ、俺は毎日、仕入れた肉を切ることから始めて、しっかりと時間をかけて味付けをする。

唐揚げ専門店だったら、当たり前の工程なんだろうけど、俺は同時進行でラーメンの仕込みもし、他のサイドメニューも同じように下準備しているので、どんなに時間があっても足りないぐらいだ。

一度、手間を加えた味を提供してしまったら、もうあと戻りはできない。効率や原価を優先して、手間をかけずに質を落とすぐらいなら、メニューから削除してしまったほうがいい。それぐらいの覚悟で臨まないと、常連さんですら離れていってしまう。

唐揚げというのは、なかなか大変なメニューだ。下味を付けたら、あとは油で揚げるだけじゃないか、と簡単に考えている方も多いかもしれないが、その油もひと筋縄ではいかない。

天ぷらだったら、常に油を交換して、澄んだ状態で揚げたほうが美味しくなる。値段の高い質のいい油であれば、より繊細に、そしてカラッと揚がる。

ところが唐揚げの場合、油をすべて交換してしまうと、ちょっと味に物足りなさを感じてしまうのだ。唐揚げを揚げた時、その旨みが油にも染み込んでいく。その油で次に揚げると、いい感じで旨みが肉に戻っていってくれる。ひとことでいえば、味にコクが出るのだ。

そして油も高ければいいというわけではなく、肉質にあったものを、自分で試しながら探していく必要がある。たしかにこんな手間はお客さんにわかってもらえるはずもない。

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