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愛猫を失った男性の「ネコは外が幸せ」という誤解 「快適な縄張り」さえあれば室内でも十分に満足

東洋経済オンライン / 2024年5月19日 11時3分

ネコの外飼いがどれだけリスクがあるか、獣医病理医が解説します(写真:Luce/PIXTA)

飼っている動物が病気になったら、動物病院に連れて行きますよね。動物病院には外科、内科、眼科など、さまざまな専門領域の獣医師がいますが、獣医病理医という獣医師がいることを知っていますか?

獣医病理医は直接患者さんと接する機会はあまりありませんが、手術で摘出された患部を顕微鏡で観察して病気の診断をしたり、亡くなった動物を病理解剖して死因を明らかにしたりしている、獣医療や獣医学になくてはならない存在です(ただし動物病院に獣医病理医がいることはまれです)。

この記事では、獣医病理医の中村進一氏がこれまでさまざまな動物の病気や死と向き合ってきた経験を通して、印象的だったエピソードをご紹介します。今回は、ネコの死を巡るお話を、2回に渡ってお届けします(こちらは後編です)。

ネコによかれと思って…

ネコによかれと思って行われる外飼い。

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しかし、ネコに家の中と外を自由に出歩かせることが、ネコを思わぬ危険にさらすことがあります。交通事故、異物の誤飲や毒物による中毒、そして感染症……。獣医病理医をしているぼくのところには、痛ましい事故で亡くなったネコの遺体がしばしば持ち込まれます。

あるとき持ち込まれた茶トラの雄ネコは、農薬か除草剤、または何らかの有毒植物による中毒死が疑われました。

外飼いされているネコは、感染症の危険にもさらされています。猫免疫不全ウイルス感染症や猫白血病ウイルス感染症など。そして、ネコが感染するいくつかの病原体は、ネコだけでなく人間にも感染します。

ネコの外飼いには、外に出たネコが人間の住む家に病気や病原体を持ち帰ってくる危険があるということです。

ネコからも狂犬病がうつる

例えば、狂犬病。

その名前から誤解があるかもしれませんが、狂犬病ウイルスはイヌだけでなくネコ、キツネ、アライグマ、コウモリなどすべての哺乳類に感染し、諸外国ではネコでの発生も多く報告されています。人間にも感染し、発症した場合は致命率がほぼ100パーセントとなる恐ろしい感染症です。

アメリカ疾病対策センター(CDC)によると、全世界で毎年およそ5万9000人が狂犬病で死亡しており、大半の狂犬病はアジアで発生しています。

日本では、行政機関などが野良イヌを積極的に捕獲してきたことから、1957年を最後に国内で狂犬病の報告はありません(国内で最後に狂犬病が見つかったのが、ネコでした)。しかし、グローバル化した社会では、人、物、そして動物の行き来が盛んですから、いま発生していないからといって、今後もずっと発生しないとはかぎりません。

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