シングル化を招く「柔軟性のない結婚と家族制度」 地方圏で根深く続く「伝統的結婚慣習や家意識」
東洋経済オンライン / 2024年5月20日 9時0分
多様な結婚やパートナー関係に対して、結婚と同等の法的権利と福祉サービスを国家が提供し、家族の多様性が社会的に承認され、社会的差別や排除の理由にならなくなってきた。
多様な家族を容認する社会を維持するためには、子育てや、教育費や、家事支援、女性の就労支援など、家族に対する公的・社会的支援の充実が進んだ。
日本では身寄りのない高齢者が急増し、身内に代わる支援やケアをめぐって深刻な問題が各地で発生している。入院にも手術にも金銭の引き出しにも、また亡くなった後の整理にも、第三者は有効な手出しができない状態にある。家族を前提とした社会制度が社会の急激な変動に対応できなくなっているのである。
今後、増加するミドル期シングルが高齢期に突入すれば、今以上に機能マヒを起こすことは火を見るより明らかである。家族を前提としない社会制度と環境づくりに早急に手をつけなければならない。
安心して暮らしていくための新しいコミュニティ
それと並んで、シングル社会に対応する新しいすまいとコミュニティの力によって孤立・孤独を防ぎ、家族が果たしてきた生活機能を代替する必要がある。
たとえば現在のような、孤立した住宅(多くが狭小住宅)ではなく、コレクティブハウスやシェアハウスなど、プライバシーを確保しながら共同生活のメリットを生かしたすまいを増やしていくなど、すまいの多様化を進めることだ。
これらは、異なる世代、異なるタイプの世帯の混住であることも重要な条件である。これらのすまいを含む地域には、くらしに必要な社会資源が配置されることも条件となる。とくにコミュニティキッチン、フリースペース、コワーキングスペースなど、コミュニティのゆるやかな関係づくりに役立つ空間を含み、孤立・孤独に陥ることなく、家族がなくても安心して暮らしていけるようなコミュニティである。
そうすれば、ひとり暮らしなど小規模世帯が多数を占める状況や、ひとり親世帯、高齢の親と子の世帯、共働きの子育て世帯、障害や病気の家族がいる世帯などが、どのような状況下におかれても安心して暮らすことが可能になるだろう。
宮本 みち子:放送大学名誉教授、千葉大学名誉教授
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