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実は「世代間ギャップが大きい国」だった日本 「ジャパン・アズ・ナンバーワン」幻影からの脱却

東洋経済オンライン / 2024年5月20日 9時30分

もちろん人間は個人によって多様であり、全てを「世代論」で論じることはできないにせよ、基本的な認識として、私と団塊世代(およびそれより上の世代)との間には根本的なギャップがあり、一方、自分よりも若い世代については、むしろ連続性を感じるというのが偽りない“実感”だった。

「世代間距離」を示すデータ

以上は私の主観的な認識に関する話だが、興味深いことに、こうした点を客観的に示すデータがある。それは数年前に亡くなられた社会学者の見田宗介氏――これまであまり記す機会がなかったが、私の大学院時代の指導教員でもあった――が著書『現代社会はどこに向かうか』(岩波新書、2018年)で提示している、NHK放送文化研究所「日本人の意識」調査(1973年以降5年ごとに実施)のデータである。

詳細は略すが、そこではさまざまな事柄に関する日本人の意識の変化が、「戦争世代」「第一次戦後世代」「団塊世代」「新人類世代」「団塊ジュニア」「新人類ジュニア」という世代ごとに区分される形で示され分析されている。

そして端的に言えば、そこで明らかにされているのは、「新人類」以降の世代においては、それまでと異なり、世代間の意識の差がなくなってきているという点に他ならない。
具体的には、世代間の意識の「距離」を数値化して示すと、以下となっている。

●戦争世代と第一次戦後世代=0.19
●第一次戦後世代と団塊世代=0.21
●団塊世代と新人類世代=0.18
●新人類世代と団塊ジュニア世代=0.06
●団塊ジュニア世代と新人類ジュニア世代=0.03

上記のように、新人類世代以降は世代間の距離がほとんどなくなっている。これは見事なほど、先ほど述べた私自身の経験的な実感――団塊世代ないし上の世代とは大きな価値観のズレを感じるが、下の世代との間ではあまり感じない――に合致するものだ。

「“団塊世代的”な世界観からの移行期」としての今

以上のことから、さしあたり次の点が示唆される。すなわちそれは、現在の日本は、“団塊世代的”な価値観からの大きな移行期を経験しつつあるという点である。

これは、最近「昭和」をテーマにした議論やメディアの話題が多いこととも関係しているだろう(「団塊-昭和-高度成長期」はほぼ重なり合う概念である)。つまり“外形的”には見えにくい変化だが、今の日本は人々の価値観や意識において、根本的な変容の時期をくぐり抜けようとしているのだ。

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