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社会保障拡充に協力的な財界と反発する労働組合 子育て支援金をめぐる日本の摩訶不思議な現象

東洋経済オンライン / 2024年5月20日 8時0分

繰り返しになるが、介護保険の賦課ベースは医療保険のそれの部分集合であり、医療保険、介護保険の両方に、高齢者には年金給付からの特別徴収という天引き制度がある。支援金制度は、高齢者への年金からの特別徴収を踏襲することになるので、高齢者からの支援金拠出は、公的年金の協力の下に実施されることになる。いわば既存の高齢期向けの社会保険が勢揃いで子育てを支援する仕組みが設計されていったわけである。

諸々の事情ゆえに支援金に反対しようと決めている人たちは、医療保険の賦課・徴収ルートを活用する側面をとらえて、「医療保険料の流用」と言いたいようであるが、実態はまったくそうではない。しかしながら、誰が、どういうふうに反対するのかは事前に予測できていたことから考えても、この件、話せばわかる話でもない。

次の図は、賃金システムの欠陥を補う再分配制度(サブシステム)の、日本における、現段階の全体像である。

長期保険としての介護保険

これまで長く介護、医療保険は短期保険と考えられてきたが、それらの主な保険料拠出時期と給付の集中時期を踏まえて消費の平準化の考えに基づけば医療と介護は、年金と同じく、長期保険と見るべきである。

賃金という分配システムの欠陥を補正するサブシステムとしての再分配制度を完成させるためには、この図にある2つの隙間を埋める必要がある。

それは、「子育て支援『事業主負担』で賃上げ機運は萎むのか」にも書いていたように、国民年金の被保険者が、現在20歳から59歳までであるところを、20歳から64歳まで拡張して国民年金の被保険者期間を45年とすること。そして、長期保険としての介護保険に関しては、被保険者を、ドイツをはじめとした他国の介護保険のように、医療保険の賦課ベースに揃えることだ。

支援金の次の課題は、賃金のサブシステムとしての年金、介護における、これら自然な姿の実現である。

権丈 善一:慶應義塾大学商学部教授

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