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「団塊的・昭和的・高度成長期的」思考からの転換期 「人生の分散型」社会に向かうビジョンと方向性

東洋経済オンライン / 2024年5月21日 6時50分

しかし物質的な豊かさが飽和し、また2008年をピークに人口も減少に転じ、さらに気候変動に示されるように地球環境の有限性ということも顕在化してきた今、そうした“集団で一本の道を登る”というモデルでは、かえって人々は疲弊し、個人の自由な創造性は失われ、格差や孤立が深まっていくばかりではないか。

また限りない「拡大・成長」の追求のみでは、人々の生活から時間的・空間的なゆとりが失われ、仕事と子育ての両立も困難となり、結果として人口減少がさらに加速していくだろう。このことは、たとえば47都道府県のうち東京の出生率が最低(2022年で1.04)であることにも示されている。

さらに、“経済成長がすべての問題を解決してくれる”という発想の政策対応では、社会保障を賄うための税などの「負担」の問題は先送りされ、その結果、国際的に見て突出した規模の借金を将来世代にツケ回ししている。これでは日本の未来はない。

いま日本に求められているのは、「拡大・成長」に向けて“集団で一本の道を登る”という団塊的・昭和的・高度成長期的なパラダイムから脱却し、これまでよりも各人が自由度の高い形で多様な働き方や生き方をデザインし、個別の集団を超えて他者とゆるくつながりながら、自らの創造性を伸ばしていくという社会のありようである。そうした方向は持続可能性とともにイノベーションや経済活力にもつながり、また個人の幸福(ウェルビーイング)にも寄与するだろう。

“集団で一本の道を登る”という表現の延長線上で述べれば、高度成長期という「登り」においてはゴールも一つに定まっているが、山頂に至れば“視界は360度開ける”のであり、ゴールそのものの設定を含め、各人はそれぞれ好きな道を歩んでいけばよいのである。

AIシミュレーションが示す日本の未来

最後に、私はここ数年、京都大学に2016年に設置された「日立京大ラボ」等と、日本社会の未来に関するAIを活用したシミュレーション研究を行ってきた。

それは日本社会の現在そして未来にとって重要と考えられる種々の要因(人口、経済、高齢化、エネルギー等)から成るモデルを構築し、約2万通りの未来シナリオをシミュレートし分析するという内容である。

そして、「ポストコロナ」の日本社会に関する2050年に向けたシミュレーション(2021年公表)において示されたのは、次のような意味での「包括的な分散型社会」への移行が、「都市・地方共存型」と呼びうる望ましい社会像を導くという内容だった(詳細は以下の記事を参照)。

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