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イラン大統領の事故死が中東情勢にもたらすもの 事故陰謀説、中東の武装勢力への支援、国内経済…

東洋経済オンライン / 2024年5月21日 17時0分

ホメイニ師は大統領案に反対して、最高指導者権限を本当に行使して、バニサドル大統領を罷免してしまった。ホメイニ師の後継者ハメネイ師も自身が大統領だった時、ホメイニ師と意見が対立し、ホメイニ師に反対され、意見をひっこめたことがあった。

一方でホメイニ師は、革命防衛隊が政治干渉することを「よし」とせず、禁じていた。しかし現在のハメネイ師は、最高指導者になるとホメイニ師の思想や革命防衛隊の政治・経済への干渉禁止などを無視していった。

現在の革命防衛隊はホメイニ師が干渉していた以上に、政治・経済・防衛・社会問題に干渉しているというありさまだ。

ホメイニ師はリベラル派や左派などにも支持されていたが、そのような人物はハメネイ師によって暗殺・投獄されるなどして消されてしまった。ラリジャニのような古参の革命防衛隊員も排除され、ホメイニ存命中ホメイニ師に近かった人たちはすっかり姿を消してしまった。

ハメネイ師の強権

ホメイニ家も蔑ろにされている。ホメイニ師が革命時に約束した民主主義の平等社会や豊かな暮らしといったものも実現しなかった。

ハメネイ師はペルシャ帝国復古主義者で、法学者統治による帝国の復活を目指した。レバノン、シリア、イラク、イエメンの4カ国をイランの傀儡国にすることに成功した。

この間、前述のソレイマニ司令官が実質の大統領だった。大統領や外相は名目だけで、実際にはハメネイ師や革命防衛隊の命令を実行するだけだった。

それが明らかになっていくうちに、国民も選挙への興味を失い投票率が下がっていき、ライーシ大統領の選挙時は投票率が2割しかなかった。

だが投票率が低いということは現政権の支持率を反映しているわけではない。数値は不明だが、法学者による統治は現在でもイランが盤石である程度にイラン国民に支持されている。

イラン国民の不満はあるにはある。イランの9割の人は国の経済政策に不満だ。長引く経済制裁で1979年のイラン革命前のパーレビ国王時代より生活苦はひどくなってしまった。

ソレイマニ司令官殺害の時も痛手ではあったが、ガーニ司令官が引き継ぎ混乱はなかった。今回のヘリコプター事故による痛手も上手に乗り越えていくことになるだろう。

イランの現在の体制が揺らぐことはないだろうが、墜落した大統領のヘリコプターが1970年代に購入した1960年代のモデルであるといった、大国を自任するイランには似つかわしくない姿が世界中に報道されてしまった。

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