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「突き抜けた目標」を持つからこそ見える境地 世界が注目する「内視鏡AI」創業者の行動哲学

東洋経済オンライン / 2024年5月22日 11時0分

世界から熱い注目を浴びている「内視鏡AI(人工知能)」を開発したのは、地方都市の開業医だった多田智裕氏だ(写真:Graphs/PIXTA)

今、日本発の技術である「内視鏡AI(人工知能)」が、世界から熱い注目を浴びている。

開発したのは、埼玉で日本トップクラスの検査数を誇る内視鏡クリニックの院長だった多田智裕氏だ。診療を通じて「ある疑問」を抱き、スタートアップ「AIメディカルサービス」の起業に至った。

同社はダボス会議の世界経済フォーラムで「最も有望な企業100社」にも選出されている。

「埼玉から世界を目指す」と言う多田氏の行動哲学とは? 2024年5月に発売した著書『東大病院をやめて埼玉で開業医になった僕が世界をめざしてAIスタートアップを立ち上げた話』から抜粋・編集してお届けする。

内視鏡画像診断AIで起業

「がんにかかったら、おしまいだ」

そう思っている人が、まだまだ日本では少なくないようです。しかし実は、消化管のがんは早期発見し、その段階で治療すれば、助かる病気になっています。ただ、発見が遅れると、生存率は大きく下がってしまいます。大切なのはいかに早く発見するか。そのために有効なのが、内視鏡検査(胃カメラ)です。

しかし、実際に内視鏡検査を行い、胃がんを見つけるのは、人間である医師です。ここで起こりうるのが、残念なことに「見逃し」です。

自治体による胃内視鏡検査では、医師が早期の胃がんを見逃すことがないように、撮影した内視鏡画像を別の医師がダブルチェックする仕組みが取られています。

ダブルチェックを行うことで、早期胃がんの見逃しはかなり減らせます。それでもゼロにすることはできません。ベテランの医師でも見極めが難しい胃がんもあるからです。

そこで今、注目を浴びている技術が「内視鏡画像診断支援AI」です。内視鏡専門医でも診断が困難な胃がんの画像を大量にAIに学ばせると、AIが胃がんかどうか判別してくれるのです。

私はこの内視鏡画像診断支援AIの研究開発に特化したスタートアップ企業「AIメディカルサービス」を2017年に設立しました。設立からわずか5年で、内視鏡AIの研究開発の医学論文では世界1位の被引用数を誇るようになりました(2022年11月時点)。内視鏡AIの研究開発では世界のトップランナーです。

それとともに、すでに130億円以上の資金を集めており、研究開発したテクノロジーを、日本のみならず世界の内視鏡医療現場に社会実装しようとしています。

普通の開業医がスタートアップ!?

私はこの会社を設立するまで10年以上にわたり、埼玉県さいたま市にある胃腸科肛門科クリニックの院長として、診療と内視鏡検査に明け暮れる日々を送っていました。

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