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「京大VS吉田寮生」退去迫られた院生たちの絶望 老朽化を根拠にする大学、大学自治掲げる院生

東洋経済オンライン / 2024年5月22日 11時30分

戦前期の日本における大学自治がどのように意識され、その中で学生の自由や自治はどのように考えられていたのかをテーマにした修士論文に取り組みました」

修士課程に進学して大沼さんが感じたのは、経済的な余裕がない修士の院生にとって、寮での暮らしは助かる場面が多いということだった。

「修士課程への進学当初はわからないことばかりなので労力もかかりましたし、自分でテーマを決めて調べていかなければならないので時間がとても必要でした。最初から要領よく進めていくことができる人はほとんどいないと思います。研究に割く時間が切に必要でありながら、修士の院生は経済的にも厳しい環境にある人が少なくないように感じています。

私も研究に加えて、アルバイトの疲労や裁判とも向き合ってきて、驚くほど時間がありませんでした。修士論文を書いている時期はアルバイトも減らし、学部時代に作った貯金を食い潰し、知人にお金を借りてやりくりしました。もし寮がなかったら、修了に至らなかったと思います」

大学院に進学する学生が減少傾向にあるのは、経済的負担の大きさも背景の1つだ。

大学が入学者に対して「入寮禁止」の文章を配るこの5年ですら、経済的な理由によって、吉田寮へ入寮する、修士課程の院生は少なくなかった。大沼さんは、寮での交流も重要だと感じている。

「博士課程に比べると、修士課程の院生に対する経済支援は限られていて、数少ない情報を自分で見つける必要があります。また、限られた時間を有効に使うためにいいアルバイトを見つけることも必要です。そういうニーズに対して、寮は貧乏人の集合というか(笑)、そういう情報が自然と集まるところがあるので助かります。

それに、院生が過ごす場所は研究室がほとんどです。研究室のコミュニティ中心の生活を送るものの、気軽に話せる相手がほかにいなかったら、研究に行き詰まったときや、精神的に追い込まれてしまったときに思い詰めてしまいます。実際にそれで大学院を辞めていく人がいるという話も聞きます。

私も研究が行き詰まった時期がありました。そのときに、寮でほかの分野の院生や学部生と話すことが息抜きになります。1人で煮詰まったときには、振り切って寮生と鍋を囲んだこともありました。精神衛生を保つうえでも、寮に住んでいてよかったと感じました。経済的に苦しく、忙しい大学院生にとっては、寮は1つの社会資源だと思っています」

京大の教授たちも声明文を発表

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