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「京大VS吉田寮生」退去迫られた院生たちの絶望 老朽化を根拠にする大学、大学自治掲げる院生

東洋経済オンライン / 2024年5月22日 11時30分

裁判は一審判決が出たものの、これからも高裁での審理が続く。

寮自治会では判決を受けて、「控訴をせず訴訟を終わらせること、および確約を引き続き、団体交渉を再開すること」を求める声明を出した。

また、京都大学の教員と元教員の42人も、湊長博総長らに対して声明文を提出。判決は「対話の価値や自治の価値などを認めさせた歴史的判決だったと言っても過言ではない」として、控訴を断念することと、寮自治会との対話を再開することなどを求めた。

しかし、大学側は話し合いを再開することなく控訴した。大学側は判決を「遺憾」として、「引き続き裁判所に本学の主張を理解いただくために努めるとともに、改めまして、現在、吉田寮現棟に居住している全ての者に対し、速やかに退居することを求めます」とコメントを出している。判決を受けても強硬な姿勢を変えていない。大沼さんは大学に対する思いを次のように語った。

「大学が出した『引き続き裁判所に主張を理解していただくために努める』というコメントは、本当に恥ずかしいと思います。理解を求める相手は裁判所ではなく、目の前にいる寮生や学生、教職員、市民ではないでしょうか。

改めて振り返ると、この5年間は本当に無益だったと思います。大学はこの間代替宿舎を提供し続けるために数億円を使っていると考えられます。

それだけのお金と時間があれば、老朽化の対策を進めることができたのではないでしょうか。裁判も、結局寮生に対する嫌がらせ・ハラスメントにしかなっていません」

寮廃止の動きはほかの大学でも起きている

寮を廃止する動きは、全国のほかの大学でも起きている。2023年3月には、金沢大学の男子寮である泉学寮と、女子寮の白梅寮が廃止された。どちらも寄宿料が月額700円だった。

寮生は強く存続を求めていたが、大学側は3月31日までの寮からの退去と、電気・ガス・水道の供給を停止することを一方的に通告し、同日閉鎖した。

2022年10月には大学設置基準が改正され、大学の寄宿舎はこれまで「なるべく」備えるものとされてきたのが、「必要に応じて」設けるものと変更された。寮の廃止に拍車をかける改正と受け取ることもできる。

一方で、吉田寮裁判の一審判決は、「低廉な寄宿料で居住することのみが在寮契約の目的であったとは認められず、代替宿舎の提供をもって、本件建物についての在寮契約の目的が達成され終了したとはいえない」と、居住空間だけではない寮の価値を認めたものだ。寮生の裁判での闘いが、大学の寮のあり方を再考する機会を作っているのは間違いない。

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