「頭がいい人」ほど前例にとらわれる当然の事情 「失われた30年」につながる明治の官僚システム
東洋経済オンライン / 2024年5月23日 15時0分
今の日本で「頭がいい人」と思われているのはどんな人々でしょうか。高偏差値の大学を優秀な成績で卒業した政治家や官僚、あるいは経営者などが頭に浮かぶかもしれません。ですが、生物学者の池田清彦氏は、そうした人々が政治や経済を主導してきた結果が、現在の日本の凋落につながっていると指摘します。
「頭がいい」という人に見られがちな問題点と誤解について、池田氏の著書『「頭がいい」に騙されるな』から、一部抜粋・編集して解説します。
「平均的な労働者」という呪縛
第二次世界大戦後のしばらくは高度成長でうまくやることのできた日本が、凋落を始めたのは1990年代以降のことである。
1960年代から80年代くらいまでの世界の産業は工業生産が中心で、なるべく安く大量に生産するというのが儲けるための最適なやり方とされていた。そして日本人はこのような種類の仕事にすごく適していた。
日本人が画一的な工業労働に向いているのは、教育によるところが大きい。みんな横並びで、上の言うことを聞いて、同じくらいの技量の人間を揃えて一斉に仕事をする。
そのときに全体から突出した人間は不要だから、そういう人間は頭を叩いて押さえつけ、勝手なことはやらせない。
仕事のできない人についてはレベルを引っ張り上げようとはするのだけれど、それでもダメだったら切り捨てていく。
そうすることで、大企業の工場で働いているような人たちのスキルは同レベルになり、安定した工業生産ができるようになった。
こういったやり方がもっともコストパフォーマンスがいいということで、1960年代あたりから全国的に行われるようになり、1980年代の終わりぐらいまでは、この思考とやり方でうまくいっていた。
この時期の日本は、家電や自動車などの製造販売によって世界を席巻し、戦後焼け野原だった日本の国民総生産(GNP)は、1968年に世界2位まで躍進した。
ところが1980年代の終わりから1990年に入った頃になると、だんだんこういうやり方では立ち行かなくなってきた。
平均的な労働者を育てることばかりを優先してきたせいで、アメリカのようにイノベーションを起こすことのできる天才的人材を育てようとしなかったことが、その大きな原因だ。
明治維新が生んだ官僚的エリート
平均的な労働者を育てるというのは戦後からの話ではなく、明治の頃からずっと続いてきたものである。
江戸時代の終わりに革命のようなもの(明治維新)が起きて、その時には優秀な人間がたくさんいた。しかし、すごく特殊な才能があったがゆえに敵対勢力から目を付けられて、失脚させられたり、殺されたりしていった。
この記事に関連するニュース
-
「お風呂の中でスピーチを練習」逆境を乗り越えた偉人たちの勉強法とは?
日刊SPA! / 2024年6月8日 8時52分
-
BC級戦犯 出所したはずの父は妻子の元へ帰ってこなかった
RKB毎日放送 / 2024年6月7日 16時54分
-
坂本龍馬は実はたいして活躍してなかった!?…〈勝海舟〉を抜擢し〈明治維新〉を構想した、幕末期の“知られざるカリスマ”とは【歴史】
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年6月5日 8時0分
-
「東大生の就職」コンサル選ぶ"身も蓋もない"理由 今と昔で違ってきた「賢い」ということの基準
東洋経済オンライン / 2024年5月30日 16時30分
-
モデルは軍服?消えゆく「学ラン・セーラー服」 制服廃止運動も起きた戦後までを振り返る
オールアバウト / 2024年5月28日 20時45分
ランキング
-
1ガンプラを「定価以上」で一部店舗が販売、中古も含まれ転売疑惑も セブン-イレブン「混乱を与えた」「現在は撤去」
J-CASTニュース / 2024年6月21日 13時50分
-
2アマゾン、アレクサ刷新へ 月額5─10ドルの有料版も=関係筋
ロイター / 2024年6月21日 20時31分
-
3ジャカルタ鉄道新線「日本支援で建設」決定の裏側 JICA現地事務所長に聞く「東西線プロジェクト」
東洋経済オンライン / 2024年6月22日 7時30分
-
4ホンダ、50cc以下の原付きの生産終了へ…スーパーカブは「世界で最も売れたバイク」
読売新聞 / 2024年6月22日 11時9分
-
5AIだけじゃない!予告された「iPhone」進化の中身 秋からもっと「自由」に、来年はもっと「便利」になる
東洋経済オンライン / 2024年6月22日 12時30分
複数ページをまたぐ記事です
記事の最終ページでミッション達成してください