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中国政府の「不動産買い取り政策」は簡単ではない 6年ぶりの「上海ウォッチング」で考えたこと

東洋経済オンライン / 2024年5月25日 8時30分

上海でクルマを手に入れるときには、ドライバーはクルマに乗る権利を10万元程度(現在のレートで約220万円)で買う必要がある。それに加えて車両価格を払うわけだから、クルマの保有はまことに高くつく。ところがEVを買う場合は、その権利金がいきなりタダになってしまう。それなら誰だってEVを買いますわなあ。しかも当たり前の話だが、燃料費はガソリン代よりも電気代のほうが安いのである。

ただしEVがここ数年で急に普及したせいで、「充電装置の前にクルマの行列ができてしまう」なんて現象も起きている。充電装置が足りないということで、上海のような大都会はともかく、地方都市ではEV離れが起きている、なんて話も聞くところだ。

筆者などは、「EVは中古車価格が心配」と思ってしまうのだが、そもそも中国人ドライバーには「クルマは資産」という発想が薄いらしい。ただし電池が劣化したときのことはさすがに皆が考えるので、すでに「バッテリーの交換業者」が乱立しているとのこと。機を見るに敏とはいえ、何でも過当競争になってしまうのは中国経済の常である。

お上が「次はこの産業だ!」と言えば、民間企業がどっと参入してきて、EVでも電池でも再エネ事業でもすぐにレッドオーシャンになってしまう。「中国経済の過剰生産能力」は、こんな風にして生じるのである。

5月22日、アメリカの通商代表部(USTR)は中国製EVに対する制裁関税を8月から100%に引き上げると発表した。「秋の大統領選挙目当て」「『もしトラ』に対するバイデン政権の対抗措置」といった観測もあるけれども、「とにかく中国と競争するのはご勘弁」という思いがあることは想像にかたくない。

久しぶりに歩く上海の街角はあいかわらずの賑わいで、とても景気が悪いようには見えなかった。ただしよくよく見ると、ショッピングモールなどでは閉鎖している店舗も目立つ。地元の人たちに尋ねてみると、これは皆さん「スマホで買い物」に慣れてしまい、わざわざ店舗で買い物をしなくなったからだそうだ。デジタル化が進んだのみならず、各家庭に低料金で商品を届けてくれるバイク便のサービスが急成長しているのである。

たまたま夕方の時間帯に、市内の某高級タワマンのロビーをのぞく機会があった。そこにはひっきりなしにバイク便がやってくる。晩飯どきが近づくにつれて、住民たちが注文したケータリングが届くのである。ゆえにドアマンはほぼ5分おきに、彼らをエレベーターまで案内しなければならない。いくらデジタル化が進んでも、「ラストワンマイル」は結局、人力に頼らざるをえないのだ。やっぱり日本では真似ができないことだけは間違いがない。

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