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「カスハラ」法整備でもそう簡単に解決しない事情 「お客様は神様」で生きてきた中高年の壁も

東洋経済オンライン / 2024年5月26日 12時30分

さらに、要求内容の妥当性にかかわらず不相当とされる可能性が高いものとして、「身体的な攻撃(暴行、傷害)」「精神的な攻撃(脅迫、中傷、名誉棄損、侮辱、暴言)」「威圧的な言動」「土下座の要求」「継続的な、執拗な言動」「拘束的な言動(不退去、居座り、監禁)」「差別的な言動」「性的な言動」「従業員個人への攻撃、要求」をあげています。

しかし、現場では「どこからがカスハラで、どこまでがカスハラではないのか」という線引きが難しく、「我慢せざるをえない」というケースが少なくありません。社会問題化しつつある今、行政機関には、より具体的なガイドラインの提示が求められています。

「罰則規定なし」で疑われる実効性

実際、都は防止条例に加えて禁止行為などをまとめたガイドラインを作成し、市区町村などと連携して、事業者や顧客などに情報提供、助言、相談などを行っていくとみられています。現場対応者の心をケアするほか、顧客への啓蒙活動など、ハード・ソフトの両面で未然に防ぐ方法も充実化させていく方向性なのでしょう。

ただその一方で「違反者への罰則は設けない」という基本方針に対して、実効性に対する疑問の声があがっています。さらにそれは、今後見込まれる国と厚生労働省の対応でも同様。2019年に労働施策総合推進法を改正し、「パワハラ防止策を企業に義務化したときと同じような対応にとどまるのだろう」という見方をされているのです。

しかし、パワハラは違反者に対する行政からの「助言・指導または勧告」「改善が見られなかった場合の企業名公表」がそれなりの実効性を伴う理由となってきましたが、相手が個人のカスハラではどうなのか。すでにネット上には「カスハラをするような人は聞く耳を持たない」「罰則がなければ繰り返すような人だろう」などと疑問視する声があがっています。

とりわけ現在、サービス業の現場などでカスハラを受けている人々の不満は強烈。「この程度で変わるほど簡単な問題ではない」「現場のひどさを知ろうとしないから罰則を設けない」「酔っている人に『条例違反です』と言っても聞いてもらえるわけがない」などの辛辣な声が見られます。

ではその「簡単な問題ではない」「現場のひどさ」とは、どんなことなのか。

筆者の相談者さんで業種を問わず最も多かったのは、中高年層の顧客に対応する難しさをあげる声。「お客様は神様」「客が上で従業員が下」という関係性をベースに考える傾向が強く、「シルバークレーマー」「シルバーモンスター」などと呼んで恐れている職場も少なくないようです。

「クレームは貴重」の方針も疑問

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