「不確実な報酬」で売上をアップする巧妙な戦略 不確実性による「ワクワク感」が行動を導く
東洋経済オンライン / 2024年5月28日 10時0分
「どのシャンプーを買おうか」「どのサブスクリプションサービスに加入しようか」など、私たちは日々選択をしている。私たちはこれらの選択は自由意思のもとに行っていると思っているが、実は私たちには心理的な「癖」があり、商品やサービスにおけるちょっとした工夫が、消費者の購買行動を左右するのである。今回、人間のさまざまなバイアスと選択行動について、行動科学の知見をもとに掘り下げた『自分で選んでいるつもり:行動科学に学ぶ驚異の心理バイアス』より、一部抜粋、編集のうえ、お届けする。
なぜ習慣に頼るのか?
あなたのいつもの朝を思い浮かべてみてほしい。
家を出るまでのあいだにも、あなたはいくつもの意思決定をしている。何を着るか、何を食べるか、どのルートで職場に向かうか。そのほかにもあれこれと選択をする。
朝だけではない。生活のあらゆる場面が、決定しなければならない選択でいっぱいだ。ささいなことから重大なものまでさまざまだが、そのすべてを意識して決めてはいない。選択1つひとつを真剣に吟味していたら、それだけで一日が終わってしまう。
プリンストン大学の心理学者スーザン・フィスクの言葉を借りれば、人間は「認知的倹約家」なのだ。思考すると認知のエネルギーを消耗する。だから、そのエネルギーをなるべく使わずに済まそうとする。
ノーベル賞を受賞した行動経済学者のダニエル・カーネマンは、この現象をさらに絶妙に表現した。「人間にとって『考える』というのは、ネコにとっての『泳ぐ』。できなくはないが、なるべくしたくない」。
可能な限り頭をはたらかさずに済むように、買い物などの決断において、人は習慣に頼る――つまり、同じ状況では同じことをただ繰り返すのだ。
消費者の行動を習慣化させるための方策として、報酬や褒美の設定について考えてみよう。
行動を習慣化するためには、それで何かしら報酬が得られなくてはならない――心理的に報われる感覚でもいいし、身体的・物理的な褒美でもいいし、文字どおり金銭的な報酬でもいい。
習慣形成の方法としては、おそらくこれがもっとも幅広く応用しやすいのだが、残念ながらマーケティングキャンペーンで充分に活用されているとは言いがたい。実は、ただ報酬を出すのではなく、もっと効果的に出す方法がある。報酬を不確実にするのだ。
実験で明らかにした不確実な報酬の威力
不確実な報酬の威力を明らかにしたのは、『レビュー・オブ・ゼネラルサイコロジー』誌が「20世紀でもっとも影響力のある心理学者」と呼んだB・F・スキナーである。
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