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国立大を「授業料値上げ」に追い込んだ「真犯人」 大学はただ「ピーピー騒いでいるだけ」なのか

東洋経済オンライン / 2024年5月28日 8時0分

ただでさえ、ウクライナ戦争を契機とするインフレによって、国民の生活はますます苦しくなっている。なのに、そのタイミングで授業料を値上げするなど、いったい何を考えているのか。多くの良識ある国民は、そう思っていることだろう。

しかし、肩をもつわけではないが、国立大学には、どうしてもそうせざるをえない理由がある。そうせざるをえないように、国によって意図的に追い込まれているのだ。その背景を、簡単に説明しておこう。

そもそも、国立大学は、正確にはもはや「国立大学」ではない。国立大学は、2004年に「独立行政法人」となり、現在は「国立大学法人」という法人になっている。国が直接、運営責任を負っているわけではないのだ。

独立行政法人とは、完全に民間に任せると確実に実施されない恐れがある、公共的に必要不可欠な事業――たとえば医療、交通、福祉、そして研究、教育など――を請け負う、いわば国の「代理人」のことだ。公共的に必要不可欠であるならば、国が直接運営すべきではないかと思われるかもしれないが、そうではない。国が直接運営するのは「非効率」であり、代理人に請け負わせたほうが「効率的」だという考え方が、ここにはある。

なぜ、「非効率」なのか。それは、「競争」がないからである。「効率化」するためには、「競争」させなければならない。だから、国の直接的な運営から切り離して、独立行政法人という代理人に事業を請け負わせ、代理人どうしを「競争」させることによって、「効率化」を図ろうというのである。

このような考え方に基づいて導入されたのが、「独立行政法人」という制度だ。

それは、具体的には、このような仕組みで運営される。

①主務大臣(大学の場合は文科大臣)が、それぞれの法人が達成すべき、業務運営の効率化に関する「目標」を設定する。
②法人は、その目標を達成するための「計画」を立て、それを「実行」する。
③主務大臣は、その結果を「評価」する。目標を十全に達成できた法人には「報酬」(予算の増額)を与え、達成できなかった法人には「罰」(予算の削減)を与える。
④法人は、より効率的に目標を達成するために、計画の「改善」を実施する。

見てのとおり、これがいわゆる「PDCAサイクル」(Plan〔目標・計画〕―Do〔実行〕―Check〔評価〕―Action〔改善〕)である。

ただし、ここには「カラクリ」がある。

PDCAのPには、本来、「目標」と「計画」との両方が含まれるはずだが、これが切り離されているのだ。「目標」は、国が一方的に設定する。法人が請け負うのは、その目標を達成するための「計画」だけなのだ。そして、目標が十全に達成できた場合には、報酬として、次年度の予算を増額される。しかし、達成できなかった場合には、それはお前たちが立てた「計画」が不十分だったからだ、つまり「自己責任」だということになり、罰として予算を減額され、計画の「改善」を要求されるのである。

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