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国立大を「授業料値上げ」に追い込んだ「真犯人」 大学はただ「ピーピー騒いでいるだけ」なのか

東洋経済オンライン / 2024年5月28日 8時0分

しかも、国立大学は、独立行政法人化以降、基盤的経費である「運営費交付金」を、「効率化係数」として、毎年1%ずつ削減されている。

運営費交付金とは、国が国立大学法人の運営のために必要と判断する、一定の額を交付するものだ。どの大学に、いくら配分するかを決めるのは、あくまでも国(主務大臣)である。

この運営費交付金が、国立大学の運営費全体に占める割合は、約5割である。それを、2005年度以降、毎年1%ずつカットされてきたのだから、それだけで、大学は相当、財政的に追い込まれている。もちろん、その1%分は、各大学が自己責任で「効率化」せよ、という意味である。

この結果、大学では、教職員の削減、非常勤教職員の増加(派遣職員や3~5年の「任期付き教員」など)、教員の研究費の削減、といった事態が進行した。いまや、大学から支給される研究費は、教員1人当たり年5万~10万、場合によってはゼロという大学も珍しくない。これではろくに研究などできるはずもないことは、いうまでもない。

そこで研究者たちは、「競争的研究資金」と呼ばれる、科学研究費補助金(科研費)などの研究費を、「自己責任」で獲得する必要に迫られている。ところが、これを獲得するためには、非常に煩瑣で膨大な「申請書」を作成する必要があり、そのためだけにかなりの時間と労力を奪われる。それでも、運よく科研費に「当たる」確率(採択率)は、せいぜい30%程度である。当たらなければ、その年はほとんど研究はできないことになる。さらに、運よく当たっても、年度ごとに煩瑣な「報告書」の提出を求められ、これがまた、研究時間を圧迫する。

しかも、教員スタッフの削減によって、大学の運営や学生の教育のために割かねばならない、教員1人当たりの時間数や業務量も増えている。さらに加えて、大学は「外部評価」によっても運営費交付金の額が変動するため、各教員は、すべての担当授業に関するきわめて詳細な「シラバス」の作成、その度重なるチェックと修正、年次の教育・研究活動に関する報告書の作成や自己評価、等々といった膨大な「雑務」、つまり「研究でも教育でもない業務」に追われている。

文科省でさえ認めた「大学改革」の失敗

かくして、大学、特に国立大学の教員は、研究時間と研究資金の枯渇にあえぐこととなった。2022年の文部科学省の調査によれば、大学教員全体の研究時間は、2002年度から2018年度にかけて、約65%にまで減少した。アンケート調査でも、約76%の教員が、とにかく研究する時間がないと訴えている。次に多いのが、研究資金の不足で、約56%。後者に関しては、70%以上の教員が、「基盤的経費の不足」を訴えている。

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