「社会をよくする投資」を知らなすぎた日本の代償 僕らが「マネーゲームのプロ」辞めて本を書く訳
東洋経済オンライン / 2024年5月28日 12時0分
大人から子どもまで、学校では教えてくれない「お金と社会の本質」がわかると話題の『きみのお金は誰のため――ボスが教えてくれた「お金の謎」と「社会のしくみ」』の著者、田内学氏。
2008年に鎌倉投信を設立し、「お金を増やすことと社会をよくすることは両立する」との信念から『社会をよくする投資入門――経済的リターンと社会的インパクトの両立』を上梓した、鎌田恭幸氏。
単なる資産運用ではなく、ともに「お金と社会の関係」という問題意識から書籍を執筆した2人には、いずれも「かつて金融の最前線で闘い、そこに強い違和感を覚えた」という共通点がある。金融業界が持つ歪み、そして社会への影響について、対談してもらった。
お金を考えるには、まず「社会」から
──お二人の著書は、お金がテーマでありながら、その軸に「社会」を大きくとらえています。
【写真】経済教養小説『きみのお金は誰のため』には、「勉強になった!」「ラストで泣いた」など、多くの読者の声が寄せられている。
鎌田:田内さんの『きみのお金は誰のため』は小説形式になっているから、本当におもしろいです。純粋にストーリーに引き込まれます。
田内:それは実は、社会学者の宮台真司さんの影響が大きいんです。
以前、宮台さんとある企画でご一緒したとき、経済がテーマなのに「僕たちの世代はもうだめだから、若い人の教育が大事だ」とおっしゃっていたのが意外でした。宮台さんの著書『14歳からの社会学』でも、自分たちが社会の一員であると感じることが大事だと述べている。
でも日本は、若者だけでなく親世代も含めて「社会に対して自分の責任がある」と考える人の割合が、海外に比べて少ない傾向があります。
社会への当事者意識を伝えるためには、知識ベースで「こうですよ」と教えるだけではなく、ストーリーの中に組み込むことが大事だと思ったんです。だから小説形式にしました。
──鎌田さんが、社会に関心を持ったきっかけは何ですか?
鎌田:やはり、小さいころの体験が原点になっています。私は島根県の片田舎で育ち、両親は食料品や魚やお酒を売ったりする、小さな小売店を営んでいました。お客さんは近所のみなさんです。
鎌田:お客さんが魚を買ったら「あの家の今日の夕飯は焼き魚だな」とか、アイスクリームを買ったら「子どもが喜ぶだろうな」とか、お金が動いた先には人の動きが見えていたんですね。
田内:東京だとお店がいっぱいあるから客は店を選びますけど、地方だと本当に「うちの店があるから生活が成り立っている」というケースが多いですよね。
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