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NHKドラマPが語る「女性を描く作品」なぜ増えた 話題作「燕は戻ってこない」を制作した背景

東洋経済オンライン / 2024年5月28日 19時0分

人間の善いところも嫌なところも両方を表現できるのは、ドラマなどフィクションの強みだと思っています」

「私の代わりに言ってくれている」作品

近年、特にSNS上では「登場人物に共感できたかどうか」という観点でその作品の良し悪しを断じるような傾向もある。だが、『燕は戻ってこない』は、「100パーセント共感できる!」といったような簡単な人物造形にはなっていない。

「放送後の視聴者の方の感想も『基のここの部分は好き』『理紀のここは共感できる』といったものが多くて、自分の心の中で咀嚼し続けてくれているように感じます。私は、優れたフィクションというのは新しい自分を発見させてくれる側面があると思うんです。自分では気づいていない自分の感情や考えに気づかせてくれるものだと」

板垣さんは、この原作を読んだときにも、その感覚を得たという。基は自分の遺伝子を残すことを欲し、不育症と診断された妻をときに傷つける。基の母である千味子は、息子にできる限り“良質な”代理母をあてがおうとし、ときに「クーリングオフできないの?」と言い放つ。ともすれば優生思想にも繋がってしまう可能性をもつ感覚でもある。

「基や千味子は、仮に二分するなら、悪者にされがちな登場人物だと思います。でも、私はこの2人に触れながら『自分の遺伝子を残したいと願うことはそんなに悪いことなんだろうか?』とか『高額なお金を払うとなったら、私だって相手を選ぼうとしてしまうかもしれない』と感じたんです。そういう考えが自分の中にもあったことに気づいたのは、この作品に出会えたからこそのものですね」

自分の中にたしかに存在する感情に出会うということは、気づかなかった自分に出会い、自分を揺さぶられるということにも近い。とはいえ、同作は少なくとも“わかりやすい”作品ではない。視聴者には届いているのだろうか。

「桐野さんの作品が好きな理由のひとつは、読んでいて『私の代わりに言ってくれている』と思えたり、『私はひとりじゃないんだ』と安心できるところなんです。ドラマを通じて、そう感じてくれている人もいるように思います。

私は、代理母になったこともなければ、不妊治療の経験もありません。でもこの作品を通じて、『きっと、こうなんだろうな』と想像することはできる。視聴者の方にも、それを“共感”と呼ぶかはわからないけど、“理解”はしてもらえている実感はあります」

多様性が採用される“NHKの土壌”

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