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NHKドラマPが語る「女性を描く作品」なぜ増えた 話題作「燕は戻ってこない」を制作した背景

東洋経済オンライン / 2024年5月28日 19時0分

『燕は戻ってこない』に限らず、現在放送中のNHKのドラマは女性とそれを取り巻く社会を描く作品が目立っている。これは偶然なのか。

「今そういったドラマが目立っているので、くくって評していただいている実感はありますが、特に何か号令があって、女性を描いた作品が増えているわけではありません。私が入局した頃に比べると、ドラマを作るコアなメンバーの中に女性が増えてきているのは事実で、その影響もあるかもしれません。

この10年で作り手の感覚も変わってきているし、それを受け入れる土壌もでき始めている実感があります。2021年からNHKは、BBCが始めた『50:50(フィフティー・フィフティー)The Equality Project』という、出演者のジェンダーバランスを意識しようというプロジェクトに参加していて、それは制作側の意識にも影響があります。

ただ、最近特に目立っているだけで、これまでも朝ドラでは基本的にずっと“社会の中の女性”を描いてきましたし、突然生まれた価値観でもないように思います」

長年にわたって醸成されてきたドラマの作り手の意識が、より表出しやすい状況に、現在のNHKはあるということだろう。そしてその問題意識はジェンダーにのみ向いているわけでもなさそうだ。

じつはこの4月と5月に放送されたNHKのドラマは、中年の男性が仮想空間で初めて恋をする『VRおじさんの初恋』や、障害のある俳優を起用するドラマの現場を描く『%(パーセント)』、高齢者を主人公にした『老害の人』など、“体制や社会情勢の恩恵を受けていない側”を描く作品が重なって放送されている。

「多様性というのが、NHKの制作の大きなキーワードのひとつにはなっています。挙げていただいたドラマやそれに類似する企画が提案されたとしても、考えるべき問題として捉えてもらえるようになったというか、突拍子もない意見・急進的な意見とされることはなくなってきました。

私はいまや中堅と言われる年次ですが、『VRおじさんの初恋』や『%(パーセント)』は私より若い局員の提案が通った例でもあります。昔以上に、色んな人たちの意見を吸い上げてドラマを作ろうという気運が高まっていることを感じます」

何かを糾弾しようとして作っているわけではない

そして、その変化を受け入れる土壌は、局内だけではなく視聴者の中にも醸成されつつあるのかもしれない。

「『燕は戻ってこない』は、テレビドラマとしては正直、好き嫌いが割れるかもしれないと思っていたんですが、好意的な意見をたくさんいただいていて、嬉しく思っています。

登場人物を限定的にでも肯定する声が多く、物語が他人事じゃなくなっているというか、この人たちの行く末を見届けたいという感覚になってくれているんだと思います。

『虎に翼』もチャレンジングな朝ドラですが、かなり肯定的な意見が多いですよね。もちろん、想いが強ければ、そこに反論も生まれることもあるとは思います。

ただ、少なくとも私はそうですし、他のNHKのドラマスタッフも同じだと思いますが、決して何かを糾弾しようとしてドラマを作っているわけではない。ただ、そこに問題意識があるから、ドラマとして結実しているんだと思います」

その問題意識は視聴者にも伝播し、“簡単には答えの出ない問題”を考え続けるきっかけを与えてくれている。

霜田 明寛:ライター/「チェリー」編集長

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