中山秀征『夜もヒッパレ』に見たプロの仕事術 安室奈美恵らと作り上げた「妥協なき華やかさ」
東洋経済オンライン / 2024年5月29日 16時0分
麹町にあった日本テレビのスタジオに足を踏み入れると、ステージ袖では葉巻を片手に談笑する堺正章さんや井上順さんの姿。ステージ上には、グッチ裕三さん、モト冬樹さんのビジーフォー、生バンドや大勢のダンサーもいる。
そんなきらびやかな場で、若き日のベッキーやSHELLY、沢尻エリカさんが汗をかきながらリハーサルをしている。
目の前に広がる光景はまさに、子どもの頃に憧れていた"キラキラしたテレビの世界"。その"キラキラ"は画面に映らないところにまで徹底されていました。
たとえばスタジオの一角にあったBarカウンター。
そこではリハーサルから収録終了までずっと、バニーガールが2、3人、業界関係者や出演者に飲み物を振る舞ってくれます。ショービジネスの世界の住人になったようで、モチベーションが高まりました。
Barといえば思い出すのが、1人、とてもノリの良いバニーガールがいて、ある日の収録後、僕とモト冬樹さんと3人で飲みに行くことに。この頃は仕事終わりに共演者やスタッフと必ず飲みに行っていました。
話が盛り上がってきた頃、「私、実はニューハーフなんです。本名は大西賢示です〜」と告白されて……。これがのちに長い付き合いになる、「はるな愛ちゃん」との衝撃の出会いでした。
「キラキラした憧れの世界で働いている!」という熱はスタッフからも感じました。
熱のある現場は活気にあふれ「新たなアイディア」が次々と生まれます。ディレクターは「どの歌番組にも負けない!」と、斬新なカット割りを考え、カメラマンもその熱意に応えようとします。
忘れられないのが、当時、まだ珍しかった女性カメラマン。小柄な彼女は、新人なのに抜群のフットワークで、ハンディカメラをぐるぐる回しながら出演者にドリーイン(近づいて撮影)するといった「新たなワザ」を次々と生み出していました。
一方で、谷啓さんの「ガチョーン」のズームイン・アウトを手動で撮ったという大ベテランが、クレーンの職人芸を披露したり……。ステージ上と同じく「画作り」でも、レジェンドと新世代とが切磋琢磨する相乗効果がありました。
スタジオの中に、それも、映らないところにBarを作ってバニーガールまで配置するなんて、まだバブルの残り香があった時代だからこそできた芸当で、今なら「制作費の無駄遣い」と一蹴されるかもしれません。
ただ、これも"憧れの華やかな世界"にこだわったからこそのポジティブな無駄で、現場の意思統一や、活気を生み出す効果があったのも事実です。
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