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上司の気難しい表情すら管理する社会の結末 Z世代の不快を消す「デオドラント化」の限界

東洋経済オンライン / 2024年5月29日 9時30分

仕事が嫌だ、上司が嫌だ…ネットやSNSを眺めていると、そんな言説であふれている(写真:ほんかお/PIXTA)

若者と接する場面では、「なぜそんな行動をとるのか」「なぜそんな受け取り方をするのか」など理解しがたいことが多々起きる。

企業組織を研究する経営学者の舟津昌平氏は、新刊『Z世代化する社会』の中で、それは単に若者が悪いとかおかしいという問題ではなく、もっと違う原因――たとえば入社までを過ごす学校や大学の在り方、就活や会社をはじめとしたビジネスの在り方、そして社会の在り方が影響した結果であると主張する。

本記事では、職場にあふれるストレス、とりわけ若手社員が管理職に対して感じるストレスを排除する志向の高まりについて、その問題を分析する。

お金を払って「嫌なこと」を解決する

仕事が嫌だ、上司が嫌だ……ネットやSNSを眺めていると、そんな言説であふれている。「退職代行業」への依頼がGW明けに殺到しただとか、世の人々は本当に会社が嫌いなのだろうな、と思ってしまうようなニュースばかり耳にする。

嫌なものをできるだけ、見ないようにして消してしまいたい。そんな気持ちは痛いほど理解できる。ただ、世の中そううまくはいかないもので、古くから人はなんとか折り合いをつけながら、会社や社会と向き合ってきた。

しかし、現代ではますます「ビジネス」が威力を増し、お悩みを解決してくれるようになっている。退職代行にしても同様だ。もともと退職したいわけだから、会社の人と会うのは気が進まない。ましてや直接退職を告げるなんて、とんでもなく嫌なことだ。

そんな気持ちを解決してくれる他者が、現代にはあふれている。お金さえ払えば、嫌で仕方ないことを代わりにやってくれる。

「退職代行」に違和感をもつ方も少なくないだろう。そんなことも自分でやれないのか、とか、そんな精神で次の会社でうまくやれるのか、など。ただ現代では、「価値観の変容」に異議を唱えるのが間違いなく難しくなっている。

みな歴史を忘れ、新しく生まれたもののほうが正しくて、旧い立場から発言しようものなら即座に「老害」だと(とても嫌な言葉だ)、認定されてしまう。

上司は存在がマイクロアグレッション

マイクロアグレッション(微細な加害)という概念がある。アメリカ発の概念で、「無意識な差別」などの言葉と紐づく。ブラジル出身のサッカー少年に「やっぱりブラジル人はサッカーうまいね」とか、インドの方に「毎日カレーを食べるのですか」と訊くことなどが当てはまる。一方的なステレオタイプを基に決めつけるわけだ。

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