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少女の壮絶人生演じる「河合優実」に見た芯の強さ 不適切にもで話題、新作の「あんのこと」への想い

東洋経済オンライン / 2024年5月29日 12時30分

あまりにも育った環境が違うので、私には想像するしかない。彼女はいろいろな痛みを受けてきました。それをいまの自分が経験することはできません。でも、共有できる感情もあります。

小学4年生で不登校になった杏は、社会経験が乏しいから、新しいものに出会ったときの感動が子どものように大きい。うれしいことがあったり、何か新しいことができるようになるたびに心がキラキラする感じは、私自身も同じです。そういう部分をふだんから素直に感じようと思っていました。

映画が現実の社会問題にどう役立つのか

――現代の社会問題を鋭く映し出す社会性の高い作品です。この映画が世に出ることで、社会にどう役立つことができると考えますか?

撮影に入る前に、そういう社会問題や課題に対して、映画を作ることにどういう意味があるのかなって、すごく悩んでしまって……。私は社会問題を伝えるジャーナリストでもないし、支援するボランティアをしているわけでもない。

直接、誰かを助けることを何もしないで、その問題を映画にするという、まわりくどいことをわざわざしている。何でこんなことをしているんだっけ、と考え込む瞬間って、今回の映画だけではなくて、すごくあるんです。

その答えはまだ見つかっていません。

杏のような境遇の人は、映画にアクセスできる環境にない。でも、その周りにいる人や、まったく関わりがない人たちが、自分たちのすぐ隣や、身の回りでこんな状況がいま現実にあるのだと想像してもらうことはできるかもしれない。

それが映画を作るひとつの意義だと思います。

――直接ではなくても、社会に影響を与えていく力が、エンターテインメントにはあると思います。

そうですね。映画だから、ふだんは社会問題に関心がない人たちにも届けることができて、気づいてもらえることがあるかもしれません。何らかのきっかけで見てもらえれば、現実社会に持ち帰るものが必ずあると思います。

別の方向の興味から見た人が、結果的にいろいろなことを考えてくれて、映画と自分が生きる世界がつながっていると感じてくれたらうれしいです。

映画だから記憶に残ることもあります。ニュースで見て、そのときだけで終わりではない。映画で見たら忘れないのはすごいことだと思います。

エンターテインメントの無力さも感じる

――社会におけるエンターテインメントの役割をどう考えますか?

私はいろいろなエンターテインメントに感動するし、もしそれがなかったら生活が楽しくない気がします。自分がその感動を知っているから、多くの人に同じ体験をしてもらいたいと思って、この仕事をしています。

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