サンマ漁獲枠を削減でも「獲り放題」の残念な実態 魚が減っていく本当の理由が知られていない
東洋経済オンライン / 2024年5月29日 11時0分
サンマに限らず現在の資源管理をめぐる状況は、科学的根拠に基づく正しい情報がほとんど伝えられていません。このため日本全国で魚の獲りすぎが起きて、サンマに限らず水産資源が大変なことになっているのです。
漁業者が原因ではなく「資源管理制度」の不備
このような魚が獲れない、供給減で魚価が上がっている状況下で「漁業者の方に魚を獲るのを我慢してください」と言って「自主的」に我慢していただけるでしょうか? 仮に我慢した漁業者がいたとしても、その分、他の漁業者の方が獲ってしまうことが考えられます。これを「共有地の悲劇」といいます。
一般には獲れなくなってしまった原因が「漁業者にある」と考えている人は少なくありません。しかしながら、本当の原因は「資源管理制度」の不備にあるのです。これは、漁業者が原因と考えられている方が、自分を漁業者の立場に置き換えられればわかることなのです。
サンマが獲れなくなったのは「海水温上昇」と、中国や台湾などの「外国漁船」が日本の海域に来遊する前のサンマを獲ってしまうから。はたまた「黒潮大蛇行」の影響といった報道が流れて、多くの国民がそう信じています。過去最低の水揚量と海水温上昇を比較すると驚くかもしれません。
筆者は、それらに原因がないとは言いません。しかしながら、本質的には「科学的根拠に基づく資源管理」が行われていないこと、簡単に言うと「獲りすぎ」が原因であることを一貫して主張しています。
そして「漁獲可能量が大きすぎて機能していないこと」、「日本のはるか沖合の海水温が高くない公海上でも不漁となっていること」「仮に資源管理を行っても実績がかつての80%から20%に減っているため、かつての20~30万トンの漁獲量に戻る可能性はない」ことなどを、ノルウェーをはじめとした海外の資源管理と比較しながら10年以上発信続けてきました。
特に、近年ではネットで拙記事を読んだ方々が「これまで理解していた内容の間違い」に気づき、筆者に取材するケースが増えています。筆者は北欧の資源管理にビジネスを通じて20年以上かかわっており、現場経験も長くあります。拙記事のほうが報道より客観的で数字や分析がしっかりしていることに強い危機感とともに驚かれるのです。
サンマに限らず、スルメイカ、サケ、シシャモ、イカナゴ、アジ他ほぼ全魚種の資源が減り続けている日本の水産資源。その原因は資源管理制度の不備に尽きます。そこで「魚が消えていく本当の理由」を国民の皆様にくまなく理解していただき、世論を変えていくことが筆者の目的です。
問題の本質は資源管理にある
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