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発達障害同士の会話が「絶望的な結論」に陥るワケ 高校卒業後、5回以上転職を繰り返す30歳男性

東洋経済オンライン / 2024年5月30日 11時30分

それは発達障害も定型発達も「どっちもどっち」という結論を示すためではない。ジュンイチさんの不得手な分野や、その程度を知り、具体的にどんな支援や配慮が必要なのかを考えるために必要だと考えるからだ。

わかりやすく伝えるためにあえて「被害」という言葉を使うのだが、取材で出会う発達障害のある人は、自らが受けた「被害」の詳細は語るものの、自らが周囲に与えた「被害」については説明できない、説明しない人が少なくない。

ただそれが説明できるなら、そもそも生きづらさも感じないだろう。そんな矛盾を自覚しつつも、周囲に与えた「被害」について繰り返し尋ねる私に対し、ジュンイチさんはこう答えるにとどまった。

「臨機応変な対応ができないというのはありました。仕事以外のこと、例えば彼女の話を振られたときにうまく答えられなかったとか。でも、共通しているのは、職場の側に問題が多かったということです」

ジュンイチさんは同居している両親との関係も良好とはいえないという。最も意見が食い違うのは働き方をめぐる問題である。

両親からは、相談員と直接面談できるハローワークを通し、正規雇用の仕事を探すよう言われているという。

これに対し、ジュンイチさんはハローワークへの不信感から仕事探しは主にネットの転職サイトなどを利用している。加えて、将来は正社員やパートといった雇用ではなく、「好きな車に関する研究開発の仕事を、フリーランスとしてやってみたい」。

ジュンイチさんは家庭内のすれ違いについて「両親は『給料は嫌な仕事でもこなすことでもらう我慢料』という価値観。僕のことは『夢見る夢子ちゃん』と言います」と語る。フリーランスになるなら、家を出ていくよう迫られているという。

もし、ジュンイチさんの希望が、好きなことだけを仕事にして生きていきたいという意味ならば、私としては両親の意見も一理あるように思う。折り合えないなら1人暮らしをして、場合によっては生活保護を利用するのもひとつの方法ではないかと促すと、ジュンイチさんは「生活保護は惨めじゃないですか」と拒絶する。

私が、生活保護の利用は国民の権利ですと重ねると、「生活保護になるくらいなら、野垂れ死んだほうがいいです」。

排除されるのは発達障害のある人

ジュンイチさんから聞いた話で印象に残ったことがひとつある。それは、2016年に神奈川県相模原市の知的障害者施設「津久井やまゆり園」で起きた、元職員の男(植松聖死刑囚)が入居者19人を刺殺した事件をめぐるやり取りだ。

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