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ベトナムで「日本の会社」支える女性社長の生き様 丸亀製麺、吉野家、マツキヨなど提携先増やす

東洋経済オンライン / 2024年5月31日 12時30分

【2024年6月1日14時20分追記】初出時の記述に誤りがあり、修正しました。

ただ、「そのまま持ってくるだけでは価値を届けることはできない」とメイさんは強調する。ベトナムの人が好むテイスト、収入に見合った価格、世帯構成などを考慮して「リ・ブランディング」するのが、ロータス社の役割だ。

当面の赤字を覚悟しつつも、「お金に見合う価値」を実感できるマーケットを自ら育てていく。独自企画で売れ筋をつくり出す事例が増えており、マーケッターとしての存在価値に、メイさんはますます自信を深めている。

教育方針も日本から学んだ

そんなメイさんに、レストランで取材していたときのこと。奥の席にいる客と店員のやりとりに耳をそばだてていたメイさんが、すかさずマネージャーのスタッフに声をかけ、サポートに入るよう促す場面があった。

筆者がその様子をみて、スタッフの教育方針について話題を向けてみると、「今みたいな指示も全部、日本から学んだことですよ。30年の間ずっと、日本の人が心からの愛情で社員にも商品にも向き合っている姿をみて、素晴らしいと思ってきたんです」と言い、こう続けた。

「いつも私が社員に伝えているのは、会社は私のものではないということです。いいチームをつくって、いい関係性を築いて、一生懸命目標に向かってがんばりましょうと。でも、今の時代はあまり苦労を知らないから、人の気持ちがわからなくならないか、それをとても心配しています」

2020年からのコロナ禍では、経営する飲食店がフル営業できない事態が2年近くに及んだ。日本とは異なり、政府からの助成金はない。そんな状況下でメイさんが最優先に考えたのは、「私の財産」と呼ぶスタッフの雇用の維持だった。

ほかの会社で解雇の動きが広がる中、ロータス社は所有不動産を売却し、10億円規模の追加融資を受け、毎月の給与支払いを50〜70%でもなんとか続けながら研修を重ねた。コロナ禍が明け、景気が急回復したとき、守り抜いたスタッフの機敏な動きは業績回復の大きな支えになったという。

ベトナムの商品の「逆輸入」の提案も

冒頭で紹介した日本食レストラン「天空」では、メイさんが魅せられた日本の逸品食材がふんだんに生かされ、客の「驚きと感動」を狙ったという料理やスイーツの数々を味わうことができる。

ほかにも、日本式のベーカリーカフェでは、ベトナム人好みに改良を加えた惣菜パンが評価され、FC本部から「逆輸入」を提案されることも増えた。

メイさんの”日本歴30年”の経験を詰め込んだ「ベトナム発日本食ブランド」のアジア・海外展開の可能性が、いよいよ視野に入ってきた。

かつて日本人が置き去っていったものを引き継ぎ、全力で自分のものにしながら、ベトナム社会とともに会社を成長させてきたメイさん。

戦後、目覚ましい復興と革新をリードした日本人の原動力とはなんだったのか、その日本人の仕事観、経験的な価値とは何かを、私たちはメイさんから教わる機会が増えてくるのではないだろうか。

座安 あきの:Polestar Communications社長

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