60歳で難病「岸博幸さん」残りの人生の"優先順位" 病になって気づいた事、インタビュー前編
東洋経済オンライン / 2024年6月4日 9時30分
――2月に1回目、7月に2回目の治療を行っています。どんな治療だったのでしょう。そのときの経験を踏まえて、読者にお伝えしたいことはありますか?
僕が受けた治療は、自分の血液から血液を作る素となる造血幹細胞を採取して、それを保存して、抗がん剤で全身のがん細胞を極限まで減らしたあとに体内に戻すという「造血幹細胞移植」というもの。
抗がん剤は副作用がきつかったですね。まず吐き気がひどい。加えて、口内炎。この吐き気と口内炎でものが食べられない状態が続きました。
ただ、人によってはこの状態が2~3週間続くけれど、僕の場合、5日間で終わったんです。ちなみに、入院期間も普通だと6週間以上かかるのに、僕は4週間ですんだ。
これについては、主治医に「なんで僕はこんなに早いのか」って聞いたんです。そうしたら、「人によって副作用の出方が違うけど、岸さんの場合は基礎体力があったからでしょうね」って言われました。
さっきも話したけれど、僕は体力には自信があった。それが病気になったときの治療にも役立ったんだと思います。
今の時代、2人に1人はがんになるし、高齢化でいろんな重い病気にかかるリスクも増えている。そうなった場合の回復の速さを考えると、基礎体力は非常に重要。中高年の人は特に体力が大事だとつくづく思いました。
――副作用といえば、髪の毛も抜けたんですよね。
そう。あれは正直言って、気分いいものではなかったです。抜けるのがわかっていたので、事前に髪の毛を三分刈りにしましたが、抗がん剤を初めて数日すると、抜け始めた。
わかりやすく言うと、シャワーを浴びるたびに手にべったり髪の毛がつくわけですよ。朝起きると枕やベッドに髪の毛がいっぱい散っている。あれは非常に不快でしたね。
恩人たかじんさんの写真がお守りに
ただ、逆に言えば、こういう経験をする機会ってあんまりないじゃないですか。だから気分を切り替えて、「これはこれで楽しんでおこう」みたいなことは考えました。
これは本にも書いたけれど、恩人であるやしきたかじんさんも、抗がん剤でハゲになったんです。それで僕が入院しているとき、たかじんさんの奥さんが(脱毛したときの)写真をいろいろ送ってきてくれて、「彼も大変だった」って連絡をくれたんです。
それを読んで、自分もがんばろうという気になりました。写真は今もスマホの待ち受け画面になっています。お守りです。
――無菌室フロアでの入院中はとても大変だったと思いますが、メンタル面はどうやって保っていたのでしょう。
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