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「老いって何?」歳を気にする人が知らない"視点" 「年相応に見られたい」の「年相応」って何?

東洋経済オンライン / 2024年6月4日 13時0分

2017年から開催する「ダイアログ・イン・サイレンス」は、音を遮断するヘッドホンを装着しながら、聴覚障害者のアテンドのもと、音や声を出さずにコミュニケーションする方法を見つけ出す。

ドイツ生まれのエンターテインメント

これらのダイアログシリーズは、ドイツの哲学博士アンドレアス・ハイネッケが1988年に発案した。

ハイネッケの父親はドイツ人、母親はユダヤ人だったが、幼い頃、彼は両親ともドイツ人と聞かされていた。このため、13歳で母親がユダヤ人だと知ったとき、大きなショックを受けたという。

それ以来、ハイネッケは民族や文化が異なるだけで差別が起きることを考えるために、哲学を学んだ。そのとき、哲学者マルティン・ブーバーの著書『対話の哲学』から、「学ぶための唯一の方法は遭遇することである」という一節に出会った。

日本にダイアログシリーズを導入した志村真介さん(62歳)は、こう説明する。

「対話とは、対等な立場で話をすることです。私たちは区別したり、差別したり、整理したり、分類したりすることは得意ですが、対話のスキルは学んできていません。そんな社会で対話をするためには、強制的に対等になるシチュエーションに入ってみる必要があります」

感覚を制限された空間に入ると、「同じ時間に、同じ場所にいる相手に、興味や関心が向く」という。

志村さんは、「疑似体験からだけでは、私たちはかわいそうだから手伝うという発想になります。一方、対等な立場で対話を重ねることで、相手への関心が高まり、これまでの固定観念や既成概念が変わるきっかけを作ります」とも話す。

今回のウィズ・タイムでも、違う世代がイベントを通じて交流することで見えてくるものがある。志村さんは「三世代の場合は物差しが100年分になる」と表現する。その結果、「本質的なものの見方に到達できるようになる」とも言う。

ドイツでは、小学校教育の中にこのダイアログシリーズのプログラムが取り入れられているそうだ。ウィズ・タイムでは、終了後、子どもたちが会場内で祖父母に電話する姿が多く見られるという。いつもあまり話をすることがない祖父母に思いを寄せるからだろう。

「高齢」を新しい「価値」に

このイベントの興味深い点は、これまでネガティブにとらえられていた「高齢」を新しい「価値」に転換していることにある。

同法人はアテンドに報酬を支払っている。報酬を得ることは、年金をもらうこととは気持ちがまったく異なるそうだ。「私の義母もアテンドをした経験がありますが、給料が出た際は、私たち夫婦を青森の桜を見に連れていってくれました」と、志村さんは振り返る。

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