「見た目の良さ」が他のすべての評価を高める訳 ビジネスにも応用できる「ハロー効果」の力
東洋経済オンライン / 2024年6月5日 8時30分
「どのシャンプーを買おうか」「どのサブスクリプションサービスに加入しようか」など、私たちは日々選択をしている。私たちはこれらの選択は自由意思のもとに行っていると思っているが、実は私たちには心理的な「癖」があり、商品やサービスにおけるちょっとした工夫が、消費者の購買行動を左右するのである。今回、人間のさまざまなバイアスと選択行動について、行動科学の知見をもとに掘り下げた『自分で選んでいるつもり:行動科学に学ぶ驚異の心理バイアス』より、一部抜粋、編集のうえ、お届けする。
外見の良さがほかの印象も良くする
何か一つ気になる点があったとき、それで相手の性質全体について結論を出してしまう。
よくあることだ。1920年にコロンビア大学の心理学者エドワード・ソーンダイクが、このような決めつけはごく一般的に起きると明らかにした。
ソーンダイクの実験では、被験者となった陸軍将校に、体格、自発性、忠誠心、きれい好きかどうかなど、31種類の資質で新兵について評価させている。
結果を見ると、新兵の評価は、まったく無関係な資質同士が驚くほど強固に連動していたことがわかった。
たとえば外見など、ある資質において一人の兵士を高く評価した場合、統率力など、別の資質においてもその兵士に平均を上回る評価をつける。一つのポジティブな特徴があれば、ほかの特徴の印象もよくなるという傾向を、ソーンダイクは「ハロー効果」と名付けた。
本当にそんなふうに評価が連動するのか疑わしく思うかもしれないが、エビデンスはほかにも確認されている。
1977年にミシガン大学のリチャード・ニスベットとヴァージニア大学のティモシー・ウィルソンが、より制御された環境で、ハロー効果の実験をした。
被験者となった118人の学生は、2グループに分かれて、ベルギー人の講師が英語で話をするビデオを見た。講師の英語には強い訛りがある。
第1グループが見たビデオでは、温厚そうでフレンドリーな様子で喋る。第2グループが見たビデオでは、同じ人物が冷たく、人間味のない雰囲気で喋る。仕草の癖や訛りはどちらも同じだ。
被験者はこの講師の好感度、外見、仕草、訛りについて評価をする。予想がつくかもしれないが、温厚な講師のほうが、冷たい講師よりも好感度が高く、72%もの差がついた。
ところが温厚な講師は、その他の指標においても、冷たい講師よりも評価が高かった(外見と訛りではほぼ100%、仕草については53%ほど、高く評価された)。
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