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嬉野のティーツーリズムに外国人が殺到する理由 栃木も群馬も大失敗、官製富裕層観光の問題点

東洋経済オンライン / 2024年6月5日 9時0分

このように、外国人富裕層は、国内にいる素人が、念仏のように「ふゆうそう、ふゆうそう」と唱えて、豪華なパックツアーに仕立てればお金をじゃんじゃんむしりとれる、といったような簡単な客層ではないのです。

世界中の観光地に行った経験を持つ「旅行の玄人」である富裕層にとって「価値のある観光」とは、国や地方自治体が補助金を配れば簡単にできるようなものではありません。自ら世界中を旅して旅の価値を理解しているような人にこそ、企画できるものです。

例えば、今や東京・銀座と土地の値段があまり変わらないとも言われる北海道のニセコエリアにおいても、売り出されている富裕層向けコンドミニアムに投資をしているのは、香港などの富裕層であったりします。

また、同地で旅行者向けに夏はラフティングやカヌー、冬はスキーから乗馬などに至るまで、さまざまなアクティビティを提供している日本人も、商社で海外勤務経験を持ち、世界各国を旅してきた人だったりします。自分たちが大した旅もしていない人が、表面的な「富裕層観光」のイメージだけで企画しても、うまくいかないのは当然です。

冒頭でいきなり栃木県の恥ずかしい例を挙げてしまいましたが、このほかにも群馬県や宿泊業者が昨年夏に掲げた3泊4日の「リトリート観光」(日常の場所を離れ、仕事や人間関係で疲れた心や体を癒やすのが目的)の申込者がゼロだったりと、「官製の富裕層観光企画」はことごとく失敗しています。私は、行政は人口減少社会への対応など、行政にしかできないことに、もっと注力すべきだと思います。

それでは日本の地方での富裕層観光は難しいのでしょうか。まったくそんなことはありません。

むしろ、日本の可能性は、世界的にも稀にみるような、地方が持っている「長い歴史」や「文化性」にあります。実際、それらを活かして成長する事例が全国で続々と登場してきています。しかも、それは「補助金ありき」などではなく、民間主導による取り組みが多くを占めています。

嬉野温泉の有志が実践する「ティーツーリズム」の真髄

その代表的な事例の1つが佐賀県西部で栽培される「嬉野(うれしの)茶」を核に据えた「ティーツーリズム」でしょう。この地域の独自の取り組みは2016年頃から始まりましたが、年を追うごとに進化を遂げ、世界的にも大きな話題になっています。

嬉野温泉は佐賀駅、佐賀空港、博多駅から約1時間。隣県の長崎空港からだと30分ほどの場所にあります。2022年9月に西九州新幹線の嬉野温泉駅ができたこともあり、周辺を歩いていると、国内の観光客に混じって海外からの富裕層観光客が足繁く訪れているのが本当によくわかります。

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