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嬉野のティーツーリズムに外国人が殺到する理由 栃木も群馬も大失敗、官製富裕層観光の問題点

東洋経済オンライン / 2024年6月5日 9時0分

では、なぜうれしの茶が特に外国の富裕層から熱い注目を浴びているのでしょうか。その成功の理由をひとことで言えば、もともと地元にあった「500年の歴史を持つうれしの茶」「1300年続く嬉野温泉」「400年の伝統を持つ焼き物(肥前吉田焼)」という3つの要素を組み合わせたことにあります。

「うれしの茶」は芳醇な香りとうま味で定評がありますが、名産地・嬉野に行かないと味わえない「ティーツーリズム」の高付加価値企画化に成功していることです。

その背景には、同地にある老舗旅館「和多屋(わたや)別荘」の3代目である小原嘉元(こはらよしもと)社長を中心とした取り組みがあります。

同旅館は1950(昭和25)年の創業。敷地は東京ドームより広い、約2万坪(6万6000㎡)。客室数も100以上あります。

嬉野の地域全体の資産を発掘、旅館を世界へ開く

伝統と格式がある名家が経営する和多屋別荘を初めて訪れると、誰もが少なくとも3泊以上したくなるような旅館ですが、実は2代目が平成バブル時に子会社のテーマパークに過大投資をしたことなどで大きな負債を抱え、何度も経営難に陥っていました。

親子間の確執もあり嘉元氏はいったん家業を離れますが、コンサル会社での経験を経て、自らも旅館再生専業を行う会社を起業。10年ほどで計80件超の再生を手がけることで手腕を発揮していきます。

嘉元氏は実家再生の最後のチャンスとして2013年、36歳のときに経営を引き継いで社長に就任します。危機的状況を打開するうえで、閉じこもった発想ではなく、嬉野の地域全体の資産を発掘し、前出の「3つの要素」(うれしの茶・嬉野温泉・吉田焼)を活用して、旅館全体を開放していったのです。

今では地元での観光事業はもちろん、例えば東京都内のラグジュアリーホテルでの「お茶サービス」の展開や、さらに世界的なパティシエ(洋菓子職人)であるピエール・エルメ氏との提携など、目を見張るほどの独自の展開を行っています。

また2020年から協業しているイノベーションパートナーズの本田晋一郎氏と共に、今までこの地域になかったインバウンド施策や、マーケティングに強いIT関連企業の誘致も行っています。

これによって、嬉野地域の基盤である上記の3つの要素の価値転換や高付加価値化を行いました。さらに進出してきた企業では地元の採用を強化することで、デジタル領域のノウハウを嬉野地域に直接伝え、育てるといった新たな「循環構築」も行っています。

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