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「セクシー田中さん」報告書に欠けた"問題の本質" ビジネス視点で俯瞰するとわかる対立構造

東洋経済オンライン / 2024年6月6日 17時16分

しかし報告書から読み取れることは、そういった改変が提案された理由は漫画原作者側に伝えられていません。説明責任が果たされていないわけです。

原作者の側が大きな問題とした第3話の「ハリージ衣装でドラムソロを踊る」シーンは報告書から推察するに演出上の理由でしょう。露出の多い派手な衣装のほうが映えるのでそう決めて、脚本家はその会議での決定事項を脚本に明記します。

こういった合議で決められたことに対して、原作者は脚本家の仕業であると認識していたために、徐々に脚本家を強く非難するようになっていきます。

伝言の間に入るひとたちが問題を深刻化

ここで読み取れる問題は、伝言の間に入るひとたちが、意図しない形で問題を深刻化していることです。原作者の要望は編集者からプロデューサーにメールで伝えられます。その際、ワードで書かれた文章の失礼な物言いになる箇所はトーンを編集者が和らげたうえで、メール本文にも「希望です」など意図を和らげる文言が加えられていました。プロデューサーから編集者への連絡は主に電話で行われ、何が話し合われ、双方で何を了解したかについては今では証言が食い違っています。

このやり取りの中で日テレのプロデューサーが初めて「揉めた」ことを認識したのは第4話のエピソード入れ替えが原作者から拒否されたときで、そのときはじめて修正のない言葉通りのワードファイルを送ってもらい、原作者の強い憤りを理解します。

「直接会って話し合えばいいじゃないか」と思える箇所ですが、本件では原作者がそれを拒否しています。一方で原作者からの指摘についても脚本家は厳しい口調の指摘をそのまま読むのはつらくなったという理由で、プロデューサーに咀嚼して伝えてほしいと要望します。

相手が会議ではなく脚本家だと見誤った原作者の要求で、最終的に脚本家は第9話と最終話について降板します。

そのことは脚本家にとっては青天の霹靂のような業務命令になったわけですが、ここでどうしても譲れない大きな問題が発生します。クレジット問題です。

脚本家のクレジットをめぐる対立

小学館側の要求では、第9話と最終話の番組クレジットから脚本家の名前を外せというのです。この件についても小学館と日テレの間で何度も交渉があったのですが、最終的に第9話のクレジットからは脚本家は外され、最終話のクレジットでは脚本家のクレジットは「脚本(1~8話)」として表記されます。

小学館の報告書では「本件ドラマの第9話、第10話の脚本を書いたのは原作者」ということから「原作者が単独のクレジット表記を求めることはおかしなことではない」と結論づけていますが、ここには問題があります。

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