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共学校にも実社会にも潜む「男子校の亡霊」とは 男子校を潰しても男女平等にはならないワケ

東洋経済オンライン / 2024年6月7日 11時30分

そもそも、東大合格者数ランキング上位を男子校が占めるのは、歴史的なカラクリのせいであって、そのような学校において東大合格のための特別な教育が行われているわけではない。

1960年代まで、都立の日比谷、西、戸山、新宿、小石川など、公立共学校出身の男子が東大合格ランキング上位を寡占していた。しかし1967年の都の高校入試改革が大失敗し、都立高校が凋落する。

教育行政の失敗という嵐が都立進学校を壊滅させていったあとの荒野に残っていたのが、私立・国立の進学校であり、当時東大入学者のおよそ95%は男子だったので、必然的に男子校が上位に残った。

隕石の衝突によって恐竜が絶滅して、それまで隅っこのほうで暮らしていた哺乳類が栄えた……みたいな話だ。

東大合格ランキング上位を男子中高一貫校が寡占するようになったのは1970年代半ば。当時の学生が社会の指導的地位に立つようになったのは、年齢的に考えて早くても2010年代に入ってから。それ以前は公立共学校出身者がエリート層の圧倒的多数を形成していた。

さらに、首都圏で中学受験ブームが始まったのが1980年代半ば。その結果、私立高校からの進学者数が東大で過半数を形成したのは1990年代に入ってからのこと。その世代は現在まだアラフィフだ。

現在の男女不平等な社会をつくったのが男子中高一貫校出身者であるかのような言い方は、やや無理があるのではないかと思われる。

男子校への取材で印象的だったのは、受験競争のトップを行くような男子生徒が集まる超進学校でこそ、教員たちが「競争に勝ち続けてバリバリ稼いでぐいぐい引っ張るばかりが男性ではない」というメッセージを発していたことだ。

彼らは過酷な中学受験を乗り越えてきた。さらに中学合格と同時に「次は東大だ!」という大学受験塾のチラシを手渡され、さらなる競争へと駆り立てられている。それを教員たちもわかっている。

ある女性教員は、「ジェンダー・バイアスにとらわれている限り、いまあなたたちのなかにあるコンプレックスと優越感の難しい戦いは、きっと大学受験終わっても終わらないからね」と真剣に生徒たちに語りかけていた。

自分たちの弱さや不安を否定するのではなく、むしろ受け入れることで乗り越えてほしい。「あるべき男性像」のくびきから自由になってほしい。……という願いが込められている。

冒頭の東大のポスターの女性に対するメッセージとは相互補完的な関係をなす。

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