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創業500年「虎屋」が令和にたどり着いた"らしさ" 「TORAYA GINZA」では新たな挑戦も

東洋経済オンライン / 2024年6月7日 7時10分

上階に店を構えた理由はどこにあるのか――「少し隠れ家的な要素も含め、わざわざ来ていただけるお店にという思いがあったのです」と黒川さん。目的を持ったお客に向け、じっくり育てる店という考え方はわかるのだが、銀座の中央通りに面し、確かな存在感を放っていた「とらや」の暖簾がなくなってしまったのは、少し寂しい。街と店とブランドは一体となって人の記憶に残るもの。そこをどう築いていくかは、これからの課題の1つと言える。

パリ店の名物を国内で初めて販売

どんなお菓子が提供されるのか。1つは焼き菓子で「焼きたて 夜半の月」と名づけられたもの。注文が入ると、職人が銅板で焼き上げ、虎屋の小倉あんを挟んで供してくれる。パリ店で1994年から売っていたが、国内で通年販売するのは初めてだ。

もう1つは、フルーツを使った生菓子で、イチゴを主役に据えている。「馨」と名づけられ、淡いピンク色の姿形が愛らしい。新鮮ないちごの風味や奥深い香りを楽しんでもらうため、あくまで“できたて”を味わってもらうことにこだわった。食べてみると、イチゴの瑞々しい香りと風味が口いっぱいに広がる一方、あんこのおいしさがしっかり感じ取れる。こちらは残念ながら期間限定(5月中旬まで)で、四季折々で変わっていく。

しかも、この2種類は、カウンター席に座ると、職人が目の前で作ってくれるという贅沢な体験が味わえる。さらに、パッションフルーツやライムの果汁、山椒など、さまざまな素材を使った「ちぐさかん」という、ひとくちサイズの羊羹を新たに発売した。

500年に及ぶ歴史は、「今から未来に向け、どういうお菓子を作り、お客さまに喜んでいただけるか。その積み重ねにあると思うのです」(黒川さん)。「TORAYA GINZA」はチャレンジを行う場ととらえているという。

“今”を大事に判断していくことが肝要

長きにわたってブランドを維持していくには、創業来の基軸を貫きながら、時代の変化にフィットした挑戦が求められる。

「お客さまも、それを取り巻く環境も、日々刻々と変化していくので、その瞬間瞬間の今をとらえ、変えなければならないものを判断しなくてはいけないと思っています」と黒川さん。その際、基準や枠組みにとらわれ過ぎることがあっていけない。

虎屋の中には、代々「変えてはいけないものはない」という考えが根づいているという。つまり、過去の成功体験に則って決めるのではなく、今にとって何が大事なのかを動きながら判断し、やりながら修正して進んでいく。そういうプロセスをとってきたという。「幼い頃から、少しずつ変化しているさまが身近にあったという感覚知みたいなものが影響しているのかもしれません」(黒川さん)。

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