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創業500年「虎屋」が令和にたどり着いた"らしさ" 「TORAYA GINZA」では新たな挑戦も

東洋経済オンライン / 2024年6月7日 7時10分

企業の中で新しいことをやろうとすると「前例がないのに大丈夫なのか」「成功する確率はどれくらいあるのか」など、リスク回避しようとする意見が必ず出てくる。何とか了承をとってやってみて、成功すると「やはりあの時の判断は正しかった」となるし、失敗すると「思った通りダメだったじゃないか」となる。

しかし黒川さんの話を聞いていると、新しいことをやるにあたって、理論理屈ありきで守りに入るのではなく、やりながら柔軟かつ臨機応変に対応していくという繰り返しが500年に及ぶ歴史を築いてきたのだとよくわかる。

では、虎屋の基軸をなしている“らしさ”とは何なのか。「“美味しさを常に追求し続ける姿勢”は、虎屋らしさを表現していると思います」と即座に答えが返ってきた。

虎屋の経営理念は「おいしい和菓子を喜んで召し上がって頂く」――一見すると、当たり前のことに映るがそうではない。「お客さまに美味しいと思っていただける最高の状況を作ること、そこを追求し続けているのです」と黒川さん。

そこには、菓子そのものについての素材や技術が含まれるし、どういう場でどのように売るのか、食べてもらうのかも視野に入ってくる。製造部門、営業部門、販売部門など、社内の各部署が一体となり、美味しいお菓子を作り、味わって喜んでもらうために最善を尽くしていく。「これでいい」というゴールがあるわけではない高みを目指していく道程と言える。

1年かけたプロジェクトで行き着いた「本質」

「実は昨年、ほぼ1年をかけ、今後の虎屋のビジョンを考えていくプロジェクトをやってみたのです」(黒川さん)。社内でチームを組み、何度も議論を重ね、検証した結果、それまで使い続けてきた「おいしい和菓子を喜んで召し上がって頂く」に行き着いた。やはりこれが、虎屋の本質を表現していると皆で納得したという。

経営ビジョンが、それだけ社員の中で深く理解され、有用と認識されていることが、虎屋らしさの土台をなしているのだと腑に落ちた。

黒川さんはこれまでも、たとえば赤坂店を建て直すにあたり、オフィスも含めた10階建てのビルの建設プランが進んでいたところ、必要な機能だけを備えた低層のビルが時代に合っていると提言し、結果、顧客をはじめ、業界内外の共感を得て、ブランド価値を上げるのに貢献した。

また、パリで活躍している3つ星シェフ、小林圭さんのレストランを2021年に御殿場に、2店舗目を虎屋銀座ビル11階にに開いた。日本人シェフが作るフランス料理のデザートに学ぶところ大と考えてのことだったが、なかなか予約が取れない人気店になっている。虎屋は「老舗なのに新しい」といった感覚が、人々の間に根づいてブランド価値を築いているのは、こういう事実を積み重ねてきた成果と言える。

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